片側尿管閉塞マウスモデルを用いて腎線維化を誘導した際、MRTF分子の活性が上昇し、尿細管上皮細胞が筋線維芽細胞に形質転換(上皮間葉転換)し、ファイブロネクチンなどの細胞外基質を分泌することで、組織線維化が進行していく。MRTFのsiRNAを用いてMRTFの活性を落とせば、腎間質線維化阻害効果が得られるのではないか、また、MRTFを介する腎線維化経路を解明することが、将来の逆流性腎症、慢性腎不全の治療法開発へと繋がるのではないかということがこの研究の目的である。 まず最初にラットの腎筋線維芽細胞NRK-49FでMRTFの活性をsiRNAでノックダウンした。Western blot、phalloidin染色の結果から、NRK-49Fは細胞質内の筋原繊維様収縮装置を失い、特徴的な中胚葉由来筋系分子マーカーの発現も低下、筋線維芽細胞としての形質を失い、細胞外基質の分泌能を低下させることがわかった。 次にマウス片側尿管結紮モデルの条件検討を行なった。10週齡C57BL/6マウスで左側尿管結紮術後、collagen1を染めるsirius red染色を行なったところ、腎線維化は7日目で完成されることを確認した。また摘出腎組織においてMRTFの免疫組織染色を行い、その染色条件も確立した。 現在は腎間質線維化において生体内でMRTFが中心的役割を果たしていることを証明するため、MRTFのsiRNAをマウスに投与し、MRTF活性を落とすことで、腎の間質線維化抑制効果が得られることを検証している。尿管結紮術後、MRTFのsiRNAを投与した群と、対照となるcontrol siRNAを投与した群とで線維化の程度をsirius red染色を用いて比較している。しかしながら、MRTFのknock downが生体内ではうまく効かず、knock down効率を上げるための条件検討を現在施行中である。
|