近年増加傾向にある膀胱癌の新たな診断ツールとして、新規尿バイオマーカーの確立を目的に研究をおこなった。具体的には、われわれが、膀胱癌の網羅的遺伝子解析により、膀胱癌で特異的に発現を有する事が明らかとなったMPHOSPH1とDEPDC1について、リアルタイムPCR法を用いて発現定量解析をおこなった。昨年度の解析によって、尿沈渣中に含まれる白血球の混入がハウスキーピング遺伝子の補正に影響していると考えられたため、本年度は新たにCD13とCD31の発現定量を行って白血球混入の補正を試みた。 本学および関連病院において、膀胱癌(尿路上皮癌)と診断された非浸潤性膀胱癌25例、浸潤性膀胱癌5例の尿検体を収集。-80℃で保存された尿沈渣より、RNA抽出試薬を用いてRNAを抽出しランダムプライマーを用いた逆転写反応により、各症例のcDNAを作成した。その上で、各々の遺伝子特異的プライマーを用いてStandard curve法による発現定量を行った。その結果、CD13の発現を従来の定量結果の分母において補正した場合、2遺伝子ともに癌患者と正常人でその発現に有意な差を認めなかった一方、CD31の発現を用いて補正を行うと、担癌患者において正常検体に比べ発現亢進している傾向が認められた。また、非浸潤性膀胱癌と浸潤性膀胱癌間の発現比較を引きつづきおこなったところ、筋層浸潤性膀胱癌症例群において有意に2遺伝子の発現上昇を認めた。そこで、この2群で沈渣より蛋白を抽出し、ウエスタン法による比較を行うと、RNAと同様に進行例において蛋白発現の上昇傾向を確認した。
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