研究課題/領域番号 |
23791783
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
宮崎 利明 埼玉医科大学, 医学部, 研究員 (50589075)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 前立腺がん / EBAG9 |
研究概要 |
EBAG9は悪性のがんにおいて上昇していることから、がんにおける病態生理に影響を与えていることが知られている。EBAG9のがん細胞増殖における機能解析の過程で、in vitroの細胞培養系においてEBAG9を過剰発現もしくは発現抑制しても細胞増殖に対する影響はないが、EBAG9を過剰発現させたがん細胞をマウスに皮下移植した場合、腫瘍形成が促進され、遊走能力が増加することが判明した。これらのことより、EBAG9は腫瘍増殖を直接制御しているのではなく、腫瘍周辺の環境を変えることによって、腫瘍増殖を促進していることが考えられるがそのメカニズムは明らかではない。前立腺がん細胞におけるEBAG9の発現がもたらす影響を解析するために、まずLNCaP、DU145、PC-3の細胞株を用いて、siRNAによる発現抑制系を構築し、in vitroの細胞培養系における細胞増殖に対する変化を解析したところ、LNCaPだけでなく、DU145、PC-3に対しても細胞増殖には影響を及ぼさないことを新しく明らかにした。そして、移動能を解析したところ、EBAG9の発現を抑えることによって前立腺がん細胞の移動能を抑えることがわかった。これらの結果より、EBAG9の発現抑制はアンドロゲン依存性・非依存性に関わらず前立腺がん細胞増殖には影響を及ぼさないが、がん細胞遊走能が抑えることがわかった。EBAG9はたんぱく質の糖鎖修飾に関与することが報告されていることから、細胞接着などの制御を介してがん細胞遊走能が抑えられていると考えられた。さらに、個体レベルにおけるEBAG9の機能を解析するために、我々が独自に構築したEBAG9-KOマウスに膀胱がんMB-49細胞を皮下移植した場合の腫瘍増殖、転移能への影響を解析している。これらより、EBAG9の発現がもたらす環境変化と腫瘍増殖メカニズムを解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前立腺がん細胞におけるEBAG9の発現がもたらす影響を、LNCaP、DU145、PC-3の細胞株を用いて、siRNAによる発現抑制系を構築し、in vitroの細胞培養系における細胞増殖と移動能に対する影響を解析した。さらに、個体レベルにおけるEBAG9の機能を解析するために、我々が独自に構築したEBAG9-KOマウスに膀胱がんMB-49細胞を皮下移植した場合の腫瘍増殖、転移能への影響を解析している。これらの解析より前立腺がんと膀胱がんにおいてエストロゲン応答遺伝子EBAG9の発現が、がん細胞と周囲環境との相互作用に変化を生じさせ、作用するメカニズムをin vitroの細胞培養系とin vivoのEBAG9-KOマウスを用いて解析した。これらより、ほぼ計画通りに研究が進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、前立腺がん細胞におけるEBAG9の過剰発現系または発現抑制系による細胞周期、細胞増殖、アポトーシス、移動能、そして細胞増殖や移動能に関与するシグナル伝達などを解析する。また、形成された腫瘍塊にEBAG9のsiRNAを投与した際の腫瘍細胞、ならびに周囲間質細胞や浸潤している免疫細胞への影響を解析し、腫瘍細胞と周囲の細胞に分けて遺伝子発現解析を網羅的に探索する。さらに臨床サンプルを解析する。以上の解析を前立腺がんと膀胱がんの両面から行い、前立腺がんと膀胱がんの両者におけるEBAG9の発現がもたらす微小環境変化と腫瘍増殖メカニズムの統合的な解明を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
形成された腫瘍塊にEBAG9のsiRNAを投与した際の腫瘍細胞、ならびに周囲間質細胞や浸潤している免疫細胞への影響を解析するための実験動物とその飼育、床敷などの飼育代として使用する。前立腺がん細胞におけるEBAG9の過剰発現系または発現抑制系による細胞周期、細胞増殖、アポトーシス、移動能、そして細胞増殖や移動能に関与するシグナル伝達などを解析するための試薬類、プラスチックチューブ、血清・培地に充当する。また、論文投稿時の印刷代に使用する。
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