研究課題/領域番号 |
23791788
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
松島 将史 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (00464850)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 膀胱癌 / IL-21 / IL-15 / マウス膀胱癌同所性モデル |
研究概要 |
In vitroにてマウス膀胱癌細胞株MBT-2細胞にリポソーム法にてLacZプラスミド導入を行い、X-gal染色にてプラスミドの効率的な導入を確認した。当初使用していたリポソーム製剤(GenePORTER® Genlantis)によるプラスミドの導入効率が、予想以上に低かったため、種々のリポソーム製剤(GenePORTER® Genlantis, GenePORTER®3000 Genlantis, LipofectamineTM LTX invitrogen, FuGENE® 6 Roche)をその各濃度別に使用し、その導入効率を比較し、最も適切な製剤および濃度を検討した。その結果、LipofectamineTM LTXが65%程度と高い導入効率を示した。この導入法を確立することにより、細胞毒性の無いリポソーム濃度での(10ug/5x105 MBT2 cells)効率的な遺伝子導入が可能となった。全身麻酔下にC3H/HeNマウスの膀胱内へMBT-2細胞を注入し2時間尿道を結紮することにより、マウス膀胱癌同所性モデルを作成した。具体的にはマウスをネンブタール50mg/kg腹腔内注射にて麻酔を行い、仰臥位とする。経尿道的に24G 血管カテーテル外筒を挿入し、MBT-2細胞浮遊液5×105個/0.05mlを注入し、2時間尿道を糸で縛り内溶液を貯留させる。本手技の確立により、腫瘍の生着率はほぼ100%となった。In situでの膀胱内へのLacZプラスミド導入では、特に腫瘍巣に強いX-gal染色を認め、効率的な遺伝子導入が in situでも行われていることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初使用していたリポソーム製剤によるプラスミドの導入効率が、予想以上に低かったことが第一の問題であった。そこで本手技を確立するため、種々のリポソーム製剤をその各濃度別に使用し、その導入効率を比較し、最も適切な製剤および濃度を選ぶ必要があったため時間を要した。またマウス膀胱癌同所性モデルを作成するに際し、腫瘍の生着率が予想以上に低かったことが第二の問題であった。そこでMBT-2細胞の各濃度別にモデル作成を行って、最適な細胞濃度を確定する必要があった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)IL-15プラスミド、IL-21プラスミドを用いたリポソーム法による膀胱内遺伝子導入およびタンパク発現の確認(治療プロトコールの作成)。IL-15、IL-21リポプレックス懸濁液を注入してからそれぞれ1,2,3,5,7,14日目に膀胱を摘出してreal-time PCR法を行いIL-21およびIL-15の遺伝子の導入効率を定量的に行う。次に、代謝ケージを使用し、連日マウス尿を採取しIL-21およびIL-15濃度をELISA法にて測定し、それぞれの分泌量を測定する。これらの結果を基に、最適な投与間隔や回数の治療プロトコールを作成する。(2)MBT-2同所性膀胱腫瘍モデルを用いたIL-15/IL-21遺伝子治療の検討 治療後の膀胱を摘出し膀胱局所の腫瘍の重量を測定、また転移の有無(特にリンパ節、肺転移)もあわせて調べる。摘出した膀胱はDNAを抽出した後real-time PCR法を行いIL-15/IL-21の遺伝子の確認を定量的に行う。細胞周期(p53、p21、p27、RB)、血管新生(CD-34、VEGF、basic FGF、angiostatin、endostatin、thrombospondin-1)、アポトーシス(Bcl-2、Bcl-xL、Bad、Bax、IAP)蛋白の検出を免疫染色法にて確認する。(3)Rechallengeを用いた長期間の免疫応答誘導、再発転移抑制効果の確認IL-21単独、IL-15単独、両者の併用による遺伝子治療を行い生存が確認されたマウスに対して再度MBT-2細胞を膀胱内注入する。注入後20日後マウスの膀胱を摘出し、腫瘍の正着を検討する。さらにRechallengeしたMBT-2細胞を拒絶したマウスの脾細胞よりT細胞回収カラムを用い、濃縮した高濃度のT細胞を回収する。このT細胞を用い、腫瘍特異的な免疫記憶を獲得できていることを確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
動物実験が主体となるためほとんどが消耗品費となる。具体的にはマウスC3H/HeNとその飼育費、IL-15、IL-21プラスミドとコントロールLacZプラスミドおよびそのプラスミド増幅費、リポソーム遺伝子導入キット購入費、PCR抽出用試薬、各種抗体購入費、免疫染色試薬購入費である。
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