研究課題
今回の検討に対して同意を得られた患者より採取した血清のMMP-2およびMMP-9値を測定した。血清MMP-2値は、前立腺癌群と非前立腺癌群では有意差を認めなかったが、骨転移群では、非骨転移群と比較し有意に高値であった。また、骨転移の広がりが広範囲で有るほど有意に高値であった。一方、血清MMP-9値は何れも有意差を認めなかった。また、前立腺針生検組織に対して施行したFilm in situ zymography(FIZ)の結果、骨転移症例では非骨転移症例と比較して、ゼラチナーゼ活性が強い傾向を認めた。FIZを施行した症例においてzymographyを施行したところ、ゼラチナーゼ活性としては、MMP-2が強く関与していることが確認された。また、前立腺癌骨転移剖検症例に対して骨転移部位でのMMP-2およびMMP-9の免疫染色を施行し、骨転移部位においてもMMPの存在を確認することが出来た。以上より、前立腺癌の骨転移に対してMMP-2は強く関与しており、血清MMP-2値は前立腺癌骨転移症例に対するバイオマーカーとして有用であることが示唆された。未治療前立腺癌骨転移症例に対してゾレドロン酸療法を施行した患者では、PSAの低下率が高く、骨関連事象の発生率も低いことが示唆された。また、骨形成マーカーであるALPは、ゾレドロン酸使用により低下することが示された。一方、骨吸収マーカーである1CTPでは、経時的変化を認めなかった。ゾレドロン酸使用により、腰椎の骨密度は経時的に増加したが、橈骨の骨密度で経時的変化を認めなかった。
2: おおむね順調に進展している
未治療前立腺癌骨転移に対するゾレドロン酸療法の有用性は我々の検討においても確認された。今後は、骨代謝マーカーの骨関連事象に対するサロゲートマーカーとして有用性を検討する。
平成23年度より得られたデータを蓄積し、前立腺癌非骨転移症例及び骨転移症例それぞれ200例を超えた時点で前立腺癌骨転移並びに予後予測に対するノモグラムを作製を目指す。平成23年度は新規前立腺癌骨転移症例が極めて少なく、MMP等の蛋白抽出や免疫染色を行う機会が少なかった。そのため、約40万円の研究費が今年度に繰り越しとなった。平成23年度の研究をさらに発展させ、研究に使用する検体数を増やしていくとともに、得られた研究成果の解析やまとめを行い、英文誌に論文を投稿する。
新規前立腺癌骨転移症例に対するMMP等の蛋白抽出や免疫染色を行い、今後の症例数を増やす。また得られたデータを解析するために必要なパーソナルコンピューターの購入およびソフトウェアの購入ならびに組織写真を撮影するためのデジタルカメラの購入を予定している。また、実験に必要な試薬および機器を購入する予定である。
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International Journal of Urology
巻: 19 ページ: 169-173
International Journal of Clinical Oncology
巻: 16 ページ: 366-372