研究課題/領域番号 |
23791793
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
深澤 元晶 藤田保健衛生大学, 医学部, 助教 (70387728)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 精子発生 / 栄養学 / 細胞・組織 |
研究概要 |
目的:精上皮は、Sertoli細胞が形成する精巣血液関門によって血液から栄養的に隔離された特殊環境である。ここにおける栄養代謝は主に解糖系に依存すると言われるが、栄養代謝の全体像は未だ不明である。過去の断片的な知見から、精上皮においては、精細胞とSertoli細胞からなる微小栄養環境が成立しており、精細胞における不完全な栄養代謝系が補完されていると考えられる。本研究は、精上皮における栄養代謝を脂肪酸β酸化系を中心に解析し、栄養代謝と量的・質的な精子産生能との関係を解き明かす。計画:全体としては、まずSertoli細胞および精細胞(精祖細胞・精母細胞・精子細胞・精子)における栄養代謝の全体像を記載し、次に栄養代謝を操作することにより精子形成に現れる影響を解析する。本年度は、Sertoli細胞および精細胞を単離し、各細胞における栄養代謝因子の局在を網羅的に解析する。また、各細胞を不死化し、これを材料として栄養代謝能を測定する。成果:Sertoli細胞については、研究協力者・臼田信光の協力の下、ほぼ純粋な単離法が確立できた。これを初代培養細胞とし、栄養代謝酵素の遺伝子発現および蛋白を網羅的に定量するとともに、研究協力者・山口清次の協力の下、in vitroプローブアッセイによる脂肪酸代謝能を測定しつつある。これにより、Sertoli細胞における脂肪酸β酸化能を証明する実験はほぼ終了できた。現在は、脂肪酸代謝に付随するケトン体・乳酸およびピルビン酸の代謝能について測定を準備中である。一方、精細胞については細胞種毎の純粋な単離法が確立できておらず、現在は予備実験を重ねて条件を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Sertoli細胞については、栄養代謝関連因子の局在および栄養代謝能についての解析が完了しつつある。また、次の段階である栄養代謝系の阻害実験としてin vitro およびin vivoにおけるRNAi実験の準備も進んでいる。しかしながら精細胞については、以下の2点の問題点があり、栄養代謝系の解析が進んでいない。問題点1:研究実績の概要欄にも記載したように、細胞の単離が遅れている。問題点2:不死化操作が遅れている。従って、達成度は「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
計画全体としてはSertoli細胞および精細胞の両方での解析を行うが、現時点ではSertoli細胞での解析が進んでいるため、Sertoli細胞での実験を先行させる。まず初代培養Sertoli細胞においてin vitroでのRNAiを行い、遺伝子発現および栄養代謝能の阻害が有意であった配列を選択し、これらの配列を用いてin vivoすなわち精細管内でのウィルスベクターによるRNAiを行う。ここで精子形成における阻害の影響を評価し、栄養代謝系におけるポイントを絞った上で改めて精細胞における栄養代謝を解析する。問題点1の解決策としては、精細胞の各段階の単離にショ糖密度勾配法あるいはFACSを検討する。問題点2の解決策としては、細胞の不死化について研究協力者・土方誠の更なる協力を得て進めていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額約88万円が生じた理由は、精細胞の解析および細胞の不死化が遅れたためである。これらの項目は平成24年度の計画において実行予定であり、この金額を以って費用に充てる。
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