研究課題
若手研究(B)
腎癌細胞株に発現している糖脂質糖鎖の解析により、Disialyl糖鎖の発現パターンの変化が腎癌での悪性化や転移性に関連していることが推測されている。本研究では、Disialyl Lc4(DSLc4)の末端にGalNAcがβ1-4結合したDisialyl糖鎖(GalNAc-DSLc4)の合成機構と機能の解析を行ってきた。GalNAc-DSLc4の合成に関わる糖転移酵素遺伝子β4GalNAc-T2を、GalNAc-DSLc4糖鎖抗原をほとんど発現していない腎癌細胞株に遺伝子導入し、糖鎖リモデリングの結果惹起される表現型の変異を解析した結果、樹立したGalNAc-DSLc4安定発現株の増殖能および浸潤能が、コントロール細胞株よりも亢進していることを明らかにした。また、リアルタイム細胞形態計測システム(RT-CES)を用いて、細胞外基質をコーティングした表面に対する細胞の接着形態を調べたところ、GalNAc-DSLc4安定発現株がラミニンコーティングプレートに特異的に接着することを見出した。これらの表現型は、いずれもAktのリン酸化レベルがコントロール細胞株よりも高いことが関与しており、PI3K阻害剤であるLY294002を添加することで、その浸潤能やラミニンへの接着能は抑制された。GalNAc-DSLc4安定発現株のさまざまな悪性形質はPI3K-Aktシグナル経路が活性化されていることに起因することが考えられた。
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野口研究所時報
Biochem Biophys Res Commun
巻: 419(1) ページ: 7-13
doi:10.1016/j.bbrc.2012.01.086.