研究課題
再燃性前立腺癌に対する治療法を開発するためには、その発生や進展機構について明らかとすることが重要である。miRNAによる様々な病気への制御機構が明らかとなりつつあるが、再燃性前立腺癌の発生や進展に関わるmiRNAの発現や機能については不明である。本研究では、前立腺癌の再燃に関わるmiRNAを同定し、またその標的遺伝子を明らかとすることを目的として研究を行っている。我々はこれまでにバイオインフォマティクス的手法を用いて10~20個程度の前立腺癌の進展に関与する可能性が高いmiRNAを同定してきた。それらの中でmiR-30dが前立腺癌の進展に重要な働きをする可能性があることを明らかとしている。そこで、miR-30dと再燃性前立腺癌における発現と機能について検討を行った。定量的PCRを用いてmiR-30dの発現量について検討した結果、LNCaPのサブラインとして樹立したアンドロゲン非依存性前立腺癌細胞株であるLNCaP-AIでmiR-30dの発現量が高くなっていることが明らかとなった。また、研究使用の同意を得た組織検体を用いて、miR-30dの発現量を検討したところ、再燃性前立腺癌組織で高いmiR-30dの発現を認めた。更に、前立腺癌組織において、miR-30dが高く発現している症例では、再発までの期間が短いことが明らかとなった。また、幾つかのmiR-30dの標的遺伝子を同定しており、それらと再燃性前立腺癌の進展への関与について検討を進めている。その他、以前より前立腺癌の再発に深く関与するaPKCによって発現制御されているmiRNAを同定してきているが、それらがどのように前立腺癌の進展や発生に関わっているかについては検討を進めているところである。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、再燃性前立腺癌細胞及び再燃性前立腺癌組織におけるmiRNAの発現検討を行い、miR-30dが前立腺癌の再燃や再発に関与する可能性を明らかとした。更に、in vitroにおけるmiRNAの標的遺伝子群の同定という点からも、幾つかの標的遺伝子を同定することが出来ている。また、in vivoにおけるmiR-30dの機能解析についても検討を開始している。これらのことから、平成23年度に予定していた内容について、研究計画通りに進んでおり、十分に研究目的を達成している。
我々はmiR-30dによって制御されている幾つかの標的遺伝子を同定している。これらの遺伝子群は前立腺癌の発生や進展への関与のみならず、再燃性前立腺癌の発生や進展に重要であることが知られている遺伝子が多く含まれている。そこで、今後はそれらの遺伝子制御機構を詳細に検討し、miR-30d自身やmiR-30dによって制御を受ける遺伝子がどのように再燃性前立腺癌の発生や進展に関与しているかを検討していく。また、miRNAの発現量を変化させた細胞におけるタンパク発現の解析だけではなく、リン酸化タンパクなどの修飾タンパクについてもプロテオーム解析で明らかとしていくことを試みる。また、aPKCにより発現制御を受けているmiRNAの標的遺伝子についても、明らかにしていく予定である。これらの結果を得ることで、miRNAの発現とその標的遺伝子による再燃性前立腺癌の発生や進展機構について明らかになると考える。
miRNAの標的遺伝子の3’-UTR部分や標的遺伝子のクローニングを行うために使用する。また、各種抗体や遺伝子導入試薬、プロテオミクス解析のために必要な試薬を購入する。その他、研究成果を外部に発表するための費用として使用する予定である。
すべて 2011
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Cancer Sciience
巻: 102 ページ: 1576-1581
10.1111/j.1349-7006.2011.01972.x