研究課題/領域番号 |
23791799
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宮内 尚子 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究支援者 (60596162)
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キーワード | 生殖補助医療(ART) / ゲノムインプリンティング / メチル化合成酵素 / DNAメチル化 |
研究概要 |
近年ARTの普及に伴い、本来非常に稀なインプリント疾患の増加が指摘されている。本研究では、多数例の不妊症患者精子を用い、インプリント異常の頻度・程度・影響を受けやすい遺伝子について解析する。また、メチル化異常精子のパターン解析、精子形態解析を行い、DNAメチル化異常の発症メカニズムについて検討する。さらに、(食)生活習慣の影響について、特にメチル化基質を含む栄養素(葉酸、ビタミンB6等)に注目し、多変量解析によりメチル化異常との関連性について検討することを目的としている。本年度までの成果は、1)登録状況:今年度までに、精液検査を受けた患者の精子337例がすでに登録されており、症例128例、対照209例の登録が得られている。2)精子におけるメチル化解析:197検体中、50検体(25.4%)でメチル化に異常が確認された。遺伝子別にみると、精子型メチル化の異常は18%が卵子型メチル化遺伝子に異常を持っていた。症例別でみると重症乏精子症で27例中20例、中等度乏精子症38例中8例、正常精子132例中22例となった。その中で、精子型、卵子型の両方に異常を持っているのは50例中19例であった。また、精子濃度との関係を調べてみたところ、重症乏精子症群で66.7%、中等度乏精子症群で11.1%、正常精子群で22.2%が、3種以上の遺伝子に異常を持つことが確認された。3)メチル化異常と精子性状(精液所見)との関連性:メチル化異常を示す精子と精液所見(濃度、運動率、奇形率)を比較検討した。メチル化インプリント異常は精子濃度、運動率と負の相関を示し、奇形率とは正の相関を認め、メチル化異常の頻度は、精子所見と相関することが判明した。また、メチル化異常の程度についても重症型の乏精子症で最も高く、メチル化異常の頻度、程度伴に精液所見と相関することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
不妊症男性精子の収集とアンケート調査は、計画どおりに行なわれた。この試料を用い、正確なメチル化インプリントの解析が可能となり、信頼のおける成果が得られた。アンケートの回収も目標どおりに行なわれた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、ヒト男性精子のインプリント異常について、22領域について網羅的な解析を正確に行い、その異常の頻度、程度、影響を受けやすい領域を明らかにする。また、異常のパターン分類により、DNAメチル化異常の発症メカニズムについて、総合的に検討する。また、食事や生活習慣などのDNAメチル化に異常をもたらす生活環境因子について明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は本年度同様に、PCR関連試薬、シークエンシング用試薬などの遺伝子解析に必要な物品費と、学会発表や情報収集のための旅費、英文校閲謝金、論文投稿費などに本研究費を使用する計画である。次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額と合わせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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