最終年度研究成果:前年度までにクルクミンの子宮筋腫増殖抑制効果をin vitroおよびin vivoにおいて示してきた。特にin vivoにおいては120 mg/kg/dayという用量において非投与群と比べ有意な抑制効果が見られた。しかし、クルクミンの臨床応用へは非常に大きな問題がある。腸管からの低吸収性に伴う血中濃度の大きな個人差である。よって、より高吸収性のクルクミンが求められている。我々はラットとヒトにおいて血中濃度が約30倍高いことが知られている高吸収性クルクミンを(株)セラバリューズより提供してもらい、子宮筋腫モデルマウスへ投与し、その効果を元来のクルクミンと比較検討した。8週間にわたる投与の結果、移植組織のサイズに変化は見られなかった。しかし、組織学的検討の結果、組織の変性、エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、Smooth Muscle Actinの発現低下、筋繊維の減少、細胞増殖の低下およびアポトーシスの亢進といった現象がクルクミンに比べ、高吸収性クルクミンでより低濃度(30 mg/kg/day)から確認された。本結果は、クルクミンの低吸収性の改善のみでなく、臨床における用量軽減にもつながる結果である。 本研究期間全体を通じ、子宮筋腫に対するクルクミンの増殖抑制効果をin vitro、in vivoの両面から解明してきた。in vitroではクルクミンが子宮筋腫細胞のアポトーシスを誘導すること、in vivoにおいても細胞増殖の抑制およびアポトーシスの誘導、また種々の子宮筋腫の生長に必要なホルモンレセプターの発現低下を引き起こすことなどを示した。また、それらの効果が高吸収性クルクミンでより低濃度から見られることも証明した。 本研究はその効果やクルクミンの有害事象が少なく長期投与可能といった特性により子宮筋腫治療の新たな分野開拓につながるものである。
|