子宮内膜癌は腫瘍局所におけるエストロゲン合成が腫瘍の増殖促進に大きく関与すると考えられている。本研究はエストロゲン合成経路のうちスルファターゼ経路に注目し、STS阻害剤の有用性を検討している(研究協力者:伊藤潔)。 前年度はSTSの発現が異なる子宮内膜細胞株と間質細胞の組み合わせにおいて、E1Sを添加し共培養を行い関連酵素の発現動態を検討したが有意な上昇を認めなかった。そこで本年度は基質として、E1SとE2S、DHEASを用いて、STSの発現が異なる子宮内膜細胞株と間質細胞の様々な組み合わせにおいて共培養を行った。細胞増殖試験としてWST-8法を用いてDay6、8で測定した。全ての細胞株において、単独培養と比較して共培養で有意な細胞増殖は認めなかった。また、ERα、STS、EST、 Aromatase、 17β-HSD TypeⅠ、 17β-HSD TypeⅡ、IL-6、 TNFαの発現動態を各細胞株と各間質細胞で検討した。単独培養に比較して共培養で有意な各関連酵素の発現を期待したが、共培養において有意な上昇を認めなかった。次に子宮内膜癌Ishikawaを用いて、SiRNA法でSTS、EST、ERαをknock downしCell viability and apoptosis assayを検討することとした。IshikawaにDHEASを添加し、STS、EST、ERαに対するsiRNAをデザインし合成した。Lipofectamineを用いてtransfectionし、細胞増殖作用、STS阻害剤、Aromatase阻害剤を用いた細胞増殖抑制効果を検討した。しかし、Knock down効率が悪く期待される結果を得ることができなかった。 本研究によりSTS阻害剤はAromatase阻害剤よりも有意な細胞増殖抑制効果を認め子宮内膜癌の新規内分泌治療薬となる可能性が示唆された。
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