研究課題
卵巣癌の発癌機構の解明は、遺伝子診断や分子標的治療の開発に繋がる重要な側面を有する。これまでに卵巣癌のがん化過程には、癌遺伝子や癌抑制遺伝子のエピジェネティクス異常が数多く報告されている。申請者は平成24年度に、MAT2Aおよびターゲット遺伝子RB1の発現量解析およびRB1のプロモーター領域のDNAメチル化解析を行った結果、卵巣細胞株と同様の遺伝子発現変動が、臨床検体においても見られることを確認し、MAT2A遺伝子の過剰発現がRB1遺伝子のプロモーター領域のメチル化異常を引き起こし、癌化を促進する可能性を示唆する結果を得た。本年度は、卵巣癌細胞株および摘出卵巣癌組織を用いてMAT2A遺伝子のプロモーター領域およびGene body領域をbisulphite sequencing法によりPCR増幅領域内の全てのメチル化部位について解析し、遺伝子発現量とDNAメチル化の関係について検証した。MAT2A遺伝子のプロモーター領域を解析した結果、卵巣癌細胞株、正常卵巣表層上皮株、卵巣癌組織および正常卵巣組織のいずれの場合もメチル化されていなかった。培養細胞におけるGene Body領域ではMAT2Aの発現量の増加に伴いメチル化が低下し、負の相関が見られた(R=-0.882)。また、卵巣癌組織のGene Body領域のメチル化は、正常卵巣組織に比べ有意に低かった(p < 0.01)。これらの結果より、MAT2A遺伝子のGene body領域のメチル化によりMAT2Aの過剰発現が起こり、RB1遺伝子のプロモーター領域のメチル化異常を引き起こし、癌化を促進する可能性が示唆された。またMAT2Aの発現量が卵巣癌の悪性度を評価するための新規バイオマーカーとなりうる。
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Cancer Chemother Pharmacol
巻: accepted ページ: accepted
Tohoku J Exp Med
巻: 229(1) ページ: 75-81