研究課題
子宮内膜症間質細胞は性ステロイド産生能を有し、steroidgenic factor-1(SF-1)はコレステロールからプロジェステロン、エストロゲンへとつながる代謝経路において重要な役割を果たしている。子宮内膜症は形態的に子宮内膜組織と類似した組織が異所性に増殖する病態であるが、子宮内膜症組織の間質細胞では性ステロイド産生にかかわる種種の酵素の発現が亢進している。これまでに、患者の同意を得て外科的に切除された正常子宮内膜および子宮内膜症性卵巣嚢腫から間質細胞を初代培養し、それぞれからmRNAおよびタンパクを抽出し、SF-1およびその標的遺伝子である、エストロゲン合成酵素(StAR,アロマターゼ)の発現量を比較検討した。その結果、子宮内膜症間質細胞では正常子宮内膜細胞と比較しSF-1およびエストロゲン合成酵素群の発現が著明に増加しており、局所におけるエストロゲン合成が盛んに行われていることが推察された。それを踏まえ、SF-1がこれらエストロゲン合成酵素群の発現を誘導すると仮定し、正常子宮内膜間質細胞にSF-1を組み込んだプラスミドを一過性に形質移入した。そして、SF-1発現が上昇することをルシフェラーゼ活性で確認し、同時にStARおよびアロマターゼのmRNA発現量を検討したところ、SF-1を組み込まないプラスミドを形質移入したものに比較し上昇を認めた。25年度は、レトロウイルスを用いてSF-1 を組み込んだpRevTet-offベクターを導入し、対照としてLac-Zを導入した正常子宮内膜および子宮内膜症性嚢胞と遺伝子発現プロファイルを比較検討した。さらにそれらの上皮細胞をマウスに移植し、生着や組織学的な所見の差異を見いだそうと考えている。SF-1導入により正常子宮内膜から子宮内膜症に特徴的な性質への変化を確認できればin vivoにおける子宮内膜症モデルを作成可能と考えている。
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