研究課題
SIRT1は長寿と癌化の誘導という二面性の機能を持ち、その機能はDBC-1(Deleated in breast cancer-1)によって抑制的に調節されている。 またSIRT1とDBC-1の複合体が癌化に大きく関わると注目されている。当該年度はDBC-1の機能の検討を行うとともに、アポトーシス誘導時におけるSIRT1とDBC-1 の関係性をより詳細に検討し、まだSIRT1とDBC-1の関連において解明されいていない基礎研究を完成した。DBC-1はアポトーシス誘導時に分解されC末側が核外に移行することが知られているが、詳細は未解明であった。(当該年度研究の具体的内容)細胞株にアポトーシス誘導し蛋白質を抽出する。その蛋白質をウェスタンブロット法にて検討するとDBC-1の分解が認められた。カスパーゼ7阻害剤を加えた細胞株に同様の検討を行うと、DBC-1の分解が抑制された。in vitro translation法にて発現したDBC-1にカスパーゼ7を加えるとDBC-1の分解が認められた。これによって申請者らはDBC-1がアポトーシス誘導時に実行カスパーゼであるカスパーゼ7によって分解されることがわかった。またDBC-1のmutantを作成し同様の検討を行った所、カスパーゼ7による切断部位はDBC1核移行シグナルの前後2か所であることがわかった。また細胞株にアポトーシスを誘導し、SIRT1抗体、DBC-1抗体を用いて蛍光免疫染色を施行した。結果はアポトーシス誘導時にSIRT1がDBC-1と共に核外へ移行した。この事からSIRT1が核において機能しなくなり、さらにアポトーシスが進む可能性が考えられる。(意義)アポトーシス誘導時のDBC-1分解機構が解明され、SIRT-1とDBC-1の関係性も詳細に検討された。(重要性)SIRT1の調節機構について、より詳細に解明された。
3: やや遅れている
当該年度は(1)アポトーシス誘導時のSIRT1とDBC1-の発現の変化(2)婦人科癌(主に子宮体癌)臨床検体におけるSIRT1及びDBC1の発現の検討を行う予定であったが、(1)における検討に加えて、DBC-1のアポトーシス誘導時における分解メカニズムについて検討を行った。その検討に時間を擁し、結果的に進行が遅れてしまったが基礎的な部分を詳細に検討したことにより、今後の研究はスムーズに進行すると思われる。
SIRT1とDBC-1に関連する以下の検討を行う。<(1)臨床検体における子宮体癌のSIRT1及びDBC-1の発現検討>現在まで様々な癌においてSIRT1の発現が増加するという報告が数多くあるが、子宮体癌に関してはまだ報告が認められていない。当院における子宮体癌手術患者の臨床検体を50検体用い、SIRT1抗体を用い免疫組織染色においてその発現を検討する。臨床進行期、5年生存率、再発率、リンパ節転移の有無等の各パラメ-ターを設定し多変量解析にてSIRT1の発現との関連を検討する。DBC-1抗体についても同様に検討を行う。<(2)遺伝子ノックアウト法であるRNAi法を用いたSIRT1-RNAiの開発。SIRT1-RNAi及びSIRT1阻害剤であるSirtinolの癌細胞株における影響の検討>遺伝子ノックアウト法の一つであるsiRNA法を用いSIRT1-RNAiを開発する。SIRT1の発現が高いと報告されている癌細胞株において、SIRT-1-RNAi及びSIRT1阻害剤であるSirtinolを用い、アポトーシスが引き起こされるかを検討する。<(3)ナノテクノジーを用いたSIRT1-RNAi及びSirtinolミセルの開発>前述の通りSIRT1は長寿と癌化の誘導という2面性を持つので、SIRT1拮抗薬を開発しても、癌組織に集中するようなドラックデリバリーシステムを構築しなければ臨床応用は難しい。ナノテクノロジーを用いSIRT1-RNAi及びSirtinolのミセル化を試みる。そのミセルを癌細胞株において検討し、ミセル化していないSIRT1拮抗剤との比較を行う。また子宮体癌や卵巣癌等、婦人科癌を移植したヌードマウスを用い、その効果を検討する。
(1)病理検体切片作成費(2)免疫組織染色関連試薬(3)RNAi試薬およびSirtinolなど試薬費(4)ミセル化作成に関連する費用(5)マウス費用(6)学会関連費用
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Reproductive Biology and endocrinology
巻: 10 ページ: 14
10.1186/1477-7827-10-14
British jounal of cancer
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10.1038/bjc.2011.75