研究課題/領域番号 |
23791812
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松本 陽子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10466758)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | DDS / プロテアソームインヒビター / 生体イメージング |
研究概要 |
(1)高分子ナノミセル内包PIを抗癌剤として発展させ、子宮頸癌以外にも卵巣癌、子宮体癌をはじめ他の癌種への応用を目指す研究:卵巣癌細胞株TOV21を用いて皮下腫瘍担癌マウスを作成し、プロテアソームインヒビターMG132を内包した高分子ミセル製剤の抗腫瘍効果を測定する研究を行った。生理食塩水、MG132およびMG132ミセルの3種類をそれぞれ5匹ずつのBALB/cヌードマウスに投与した。現在のところMG132とMG132ミセルで有意さが出ていないが、ミセル製剤は副作用が少ないため、濃度を上げることが可能であると考えられる。(2)生体リアルタイムイメージング技術を用いた抗癌剤の体内動態の解明:ドキシルの外殻に用いられているPEGは少量投与によって抗PEG IgE抗体が産生され、次の投与の際免疫反応によって血中に投与された薬剤が抗体に補足され、貪食により早期に血中より消失する現象(ABC現象(Accelerated Blood Clearance Phenomenon))が報告されている。ABC現象の誘因、貪食の際に血管や間質での薬剤蓄積の有無、またドキシルに最近多く報告されるようになった薬剤性間質性肺炎とABC現象の関連について解析を行っている。マウスの耳を用いた血管内動態はほぼ安定して10時間以上連続観測が可能となり、PEGを外殻に持つDDS製剤のABC現象の観測に成功した。またマウスに気管切開し全身麻酔管理下で開胸、肺胞の収縮と肺胞周囲の血流をリアルタイムで観察する技術を確立した。ドキシルとアドリアシンでは投与直後から肺間質に浮腫が起き、肺胞の伸展不良や間質への薬剤の蓄積を認めた。今後この現象と薬剤性間質性肺炎やその他のドキシルに特徴的な副作用との関連について更なる研究を進める予定である。23年度の研究成果は2011年6月日本DDS学会及び12月の日米DDS学会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
卵巣癌細胞株を用いたMG132ミセルの抗腫瘍効果の研究は、播種モデルでの作成を行う予定であったが、イメージング研究に非常に時間と手間を要したためやや進達が遅れたと考えている。24年度は卵巣癌は主モデルの作成と抗腫瘍効果の評価の研究を積極的に進めることを目的とし、現在準備を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)高分子ナノミセル内包PIの卵巣癌をはじめ他の癌種への応用を目指す研究BALB/cヌードマウスを使用した卵巣癌発行細胞株、SKOV-lucを用いて腹膜播種モデルを作成する。プロテアソームインヒビターMG132と、高分子内包MG132、その他、卵巣癌に対して既に使用している白金製剤やタキサン系製剤などを経静脈投与し、抗腫瘍効果の検討を行う。腫瘍ボリュームの測定はIVISを用いる。(2)高速共焦点レーザー顕微鏡システムを用いた抗癌剤の生体内動態の解明に関する研究共焦点リアルタイムイメージングを用いた体内薬物動態の解析については、PEGリポソーム製剤やPEGミセル製剤、特にドキシルのABC現象が生体にもたらす影響についての解析を進める予定である。抗PEG IgM抗体に補足されたPEGリポソーム製剤は、クッパー細胞などに貪食され、肝臓を始め生体内の特定の場所に集積することがこれまでの研究で解明されてきている。今後は組織毎に更なる薬剤蓄積の詳細な検討と、副作用との関連について調べる予定である。現在ドキシルは製造停止となっているが、再開後患者への投与が再開され次第、東京大学医学部附属病院の倫理審査を経てドキシル投与前後、反復棟予後の血清中の抗PEG IgM抗体の測定を行う予定としている。この研究を通じて、臨床での問題点と基礎研究による解析を融合させ、今後の薬剤投与や副作用予測などへ発展させることを目指している。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品: 試薬(約20万円)実験動物購入(約50万円)リポソーム製剤の作成受託(約20万円)学会出張及び学会参加にかかる費用:日本癌学会、日本癌治療学会、婦人科腫瘍学会への参加を予定している。(計約10万円)物品費: データ保管用の外付けHD(約30万円)、ソフトウェア(約10万円)
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