研究課題
本研究では、①高分子ナノミセル内包PIを抗癌剤として発展させ、子宮頸癌以外にも卵巣癌、子宮体癌をはじめ他の癌種への応用を目指す。②生体リアルタイムイメージング技術を抗癌剤の体内動態の解明にさらに幅広く用いる研究の2つを主な研究としている。本年度は②抗癌剤の生体内動態の解明に高速共焦点レーザー顕微鏡システム(intravital real-time confocal microscopy)を用いる研究に関しては、DDS製剤のドキシルの薬剤動態の解析をさらに発展させた。ドキシルの外殻に用いられているPEGは少量投与によって抗PEG IgE抗体が賛成され、次の投与の際、免疫反応によって血中に投与された薬剤が抗体に補足され、貪食により早期に血中より消失する現象が報告されるようになってきている。この現象はABC現象(Accelerated Blood Clearance Phenomenon)と呼ばれる。ABC現象とドキシルの血中滞留性、誘因、貪食の際に血管や間質での薬剤蓄積の有無、またドキシルに最近多く報告されるようになった薬剤性間質性肺炎とABC現象が、ヒトで起こっているのかを調べるため、東京大学医学部附属病院で、倫理委員会承認の元、患者の血清サンプルからの解析をスタートさせた。血清中の抗PEG抗体や、投与後のドキシルの血清濃度と、副作用発現の関連についてのヒトでの報告はこれまで存在しない。この研究により、DDS製剤を実際の臨床に応用した際の、マウスなどの実験動物では分からなかった事象を解明し、ABC現象などの有害事象との関連や、副作用発症高リスク群の抽出などを行って、より安全なDDS製剤の使用へ結びつけたいと考えている。
3: やや遅れている
MG132ミセル製剤の腹腔内投与研究は、腹膜癌モデルを使用しているが、現在マウスの管理が臨床業務との兼ね合いで困難な状況にあるため一時中断している。平成25年度最初より再開を予定している。
①MG132ミセルのマウス卵巣癌腹膜モデルへの投与研究を再開する。腹膜播種病変への薬剤投与として、実臨床で行われるのは静脈投与と腹腔内投与である。近年では、播種メインの病態には腹腔内投与の方が薬剤集積性が高いのではないかという報告があり、卵巣癌領域でも静脈投与vs腹腔内投与の臨床試験が組まれている。これまで高分子ミセル製剤は血中投与をメインに研究開発及び薬剤動態評価を行ってきたが、腹膜播種モデルを用いて、高分子ミセルDDS製剤を腹腔内投与した場合の薬剤動態を、これまでの技術を生かしてイメージングにて捕らえ、DDS製剤の幅広い使用方法の可能性について探っていくことを検討している。
実験動物(主にマウス)購入費用として300000円を計上している。その中には、実際に子宮頸部に発癌するトランスジェニックマウスであるK14-HPV16マウスの購入及び継代費用も含む。今年度は2回国際学会発表の予定があるため出張費用として500000円を予定している。その他、研究に使用する消耗品の購入に300000円をあてている。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (17件)
J Obstet Gynaecol Res
巻: 39(1) ページ: 336-340
10.1111/j.1447-0756.2012.01917.x.
Am J Reprod Immunol
巻: 69(2) ページ: 134-141
10.1111/aji.12030
PloS one
巻: 7(5) ページ: e37431
10.1371/journal.pone.0037431