免疫寛容は妊娠維持に必須であり、最近では制御性T細胞が免疫寛容に重要な役割を果たすことが知られるようになった。しかし、胎児抗原にのみ特異的に作用する制御性T細胞が妊娠中にいつどこで増殖し活性化するかについては全く知られていない。T細胞受容体から胎児(父親)抗原特異的制御性T細胞を同定する手法を用いて正常妊娠、異常妊娠(着床不全、習慣流産)における胎児(父親)抗原特異的制御性T細胞のphenotype、数的変動、および機能について、マウスおよびヒトで明らかにすることを目的とし、実験を進めた。マウス妊娠にておいて胎児(父親)抗原特異的制御性T細胞(Vβ6+CD4+Foxp3+細胞)はアロ妊娠においてのみ着床直前より所属リンパ節で着床直後より子宮局所で増殖していることをつきとめ、更に、着床直前からの所属リンパ節での胎児(父親)抗原特異的制御性T細胞増加は精漿によるプライミングが関与していることがわかった。また、Mixed lympholyd reactionを用いた機能解析で胎児(父親)抗原特異的制御性T細胞は非特異的制御性T細胞に比較し抑制活性が低いことを確認した。マウスにおける胎児(父親)抗原特異的制御性T細胞のphenotype特定のため各種ケモカイン、ケモカインレセプター、活性化マーカーをフローサイトメトリーで検討したところCCR4やCCR5が強陽性であった。同様なphenotypeがヒトでの胎児(父親)抗原特異的Treg細胞となりうるか正常妊娠、自然流産、習慣流産症例で検討したが有意なマーカーではなく、代替マーカー検索のため、マウス胎児(父親)抗原特異的制御性T細胞を回収しマイクロアレイにて遺伝子解析提出中であり、今後ヒトに応用できるか検討していく。
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