研究課題/領域番号 |
23791821
|
研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
今道 力敬 福井大学, 医学部, 特命助教 (00570194)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | SF-1 / 卵巣 / ステロイドホルモン |
研究概要 |
申請者の所属する研究室では、ヒト間葉系幹細胞に転写因子SF-1を導入することで、ステロイドホルモン産生細胞へと分化誘導させることに成功している。申請者は、この幹細胞分化誘導系を用いたChIP-on-Chip法により、SF-1新規標的遺伝子の網羅的な探索を行った。その結果、SF-1により転写制御される候補遺伝子として、アドレノドキシン(FDX1)、アドレノドキシンレダクターゼ(FDXR)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼA3(GSTA3)、Zinc fingerタンパク質 275(ZNF275)を同定した。本研究では、卵巣における各遺伝子の転写調節機構を解明すると共に、SF-1新規標的遺伝子の役割を明らかにすることを目的とした。 当該年度においては、FDX1、FDXRおよびGSTA3の転写調節機構についてヒト卵巣顆粒膜由来KGN細胞を用いて解析した。KGN細胞における内在性SF-1のノックダウンにより、FDX1、FDXRおよびGSTA3の遺伝子発現量の減少を認めた。また、KGN細胞へのSF-1過剰発現により、FDX1、FDXRおよびGSTA3の遺伝子発現量の増加を認めた。FDX1、FDXRおよびGSTA3遺伝子のプロモーターを用いたレポーターアッセイにより、各遺伝子プロモーター上に存在する転写調節領域(SF-1結合領域)を同定した。さらに、KGN細胞を用いてステロイドホルモン産生におけるFDX1、FDXRおよびGSTA3の機能を検討したところ、各遺伝子のノックダウンまたは過剰発現系において、プロゲステロン産生量の変化を認めた。 これらの結果は、ヒト卵巣顆粒膜由来KGN細胞においてFDX1、FDXRおよびGSTA3が転写因子SF-1により転写調節され、卵巣ステロイドホルモン合成において必須の因子となることを示している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度においては、卵巣におけるSF-1新規標的遺伝子の転写調節機構についての解析とステロイドホルモン合成におけるSF-1新規標的遺伝子の機能解析を計画していた。SF-1新規標的遺伝子のうち、FDX1、FDXRおよびGSTA3について、SF-1による遺伝子発現変化を認めると共に、各遺伝子のプロモーター上に存在する転写調節領域(SF-1結合領域)を同定することができた。さらに、ヒト卵巣顆粒膜由来KGN細胞を用いた解析により、各遺伝子のステロイドホルモン合成へ及ぼす影響を明らかにし、卵巣機能におけるFDX1、FDXRおよびGSTA3の重要性を見出した。これらのことから、現在までの達成度は、(2)に該当すると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、FDX1、FDXRおよびGSTA3の転写調節機構について、より詳細な検討(転写共役因子の影響、ヒストン修飾解析など)を行う。また、ゴナドトロピン刺激前後のラット卵巣またはラット初代卵巣顆粒膜細胞を用いた解析を行うことで、卵巣分化における各遺伝子の転写調節機構および機能について検討する。卵巣特異的な因子ZNF275についても、転写調節機構の解析を行うと共に、卵巣における機能について検討する。 現在のところ、SF-1新規標的遺伝子として、4つの候補遺伝子(FDX1、FDXR、GSTA3、ZNF275)を認めているが、新たにSF-1により転写されうる候補遺伝子の探索を行う。なお、新たに見出したSF-1標的遺伝子については、予測される機能に応じて解析を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、消耗品等の物品費、国際学会発表のための旅費、人件費・謝金に使用する。
|