平成23年度は、癌細胞の核を除核未受精卵に移植する体細胞核移植法(クローン化)により、癌幹細胞モデルを作出することから開始したが、この手法によるクローン胚発生率は正常体細胞であっても低率であり時間的浪費が極めて大きいため、並行して、初期化の4因子を遺伝子導入するiPS細胞化にも着手した。 平成24年度、平成25年度は、エピゾーマルベクターをエレクトロポーレーションにより遺伝子導入する方法で癌細胞のiPS細胞化を試みた。しかし、既報の遺伝子導入条件では遺伝子導入後の細胞生存率が不良であったため、ベクターの調製によりエンドトキシンレベルの低い高純度のベクターを得るための工夫を重ねた。これにより細胞生存率ならびに遺伝子導入効率を改善させることに成功したが、遺伝子導入した細胞をフィーダー細胞上に再播種してもiPS細胞コロニーを得ることが困難であった。他施設における報告からは、癌細胞のiPS細胞化においては、細胞毎で培養条件は多様であり、非常に繊細な調整が必要であることが示唆された。また、この間、当教室における体細胞核移植技術は、種々の工夫により胚発生率の飛躍的な改善がみられていたため、平成25年度の後半からは、再度癌細胞のクローン化による癌幹細胞モデルの樹立を目指した。平成26年度は、マウスteratocarcinoma細胞のES細胞を得ることに成功した。この細胞はオリジナルの細胞と比較して形態的ならびに増殖能に相違があり、より幹細胞的な性質を有するものであることが証明された。 今後は、他の癌細胞種でのクローン化を進めるとともに、癌幹細胞としての特性解析を進め、研究目標である癌幹細胞を標的とした治療法の開発にむけた研究を行っていく予定である。
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