研究課題
日本において妊産婦死亡の最大の原因である羊水塞栓症は、子宮の中の羊水中に含まれる胎児成分が、なんらかの原因により母体中に混入し、血管内に詰まるなどの急性の呼吸循環障害を起こし、呼吸停止、心停止などにより60~80%が死に至るという病である。羊水塞栓症の血清学的診断の測定項目の一つとして、ZnCP-Iと呼ばれる胎児の腸管内(胎便)に高い濃度で含まれているポルフィリン化合物が用いられている。ZnCP-Iは、コプロポルフィリンに亜鉛が配位した蛍光化合物で、比較的不安定な物質であり、またZnCP-Iは血清中のタンパクとの結合率が高いために、血液などの複雑な試料からZnCP-Iのクリーンアップを行うことが難しい。ZnCP-Iの測定にはHPLCを用いているが、これまでの測定法には高コストで再現性が低いなどの問題点があったため、新たな測定法の開発を目的として研究を行っている。 平成23年度には、まず研究のスタートのためにZnCP-I測定装置として用いているHPLCの構成機器の一部更新や、データ取得、解析ソフト刷新を行った。またこの装置構成の変更を受けて、低コスト化のために測定システムのセミミクロ化の検討を行った。この検討の結果、現在の測定法と比較して低コストなZnCP-I測定が可能となった。今後は、この検討をより一層進め、新規測定法の開発を行い、実際の検体にて新規測定法と現在の測定法の比較検討を行い、新規測定法への変更の検討を行う。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、当初は予定していなかった本研究のための実験室の移動があり、また測定用のソフトウェアの変更が予想以上にスムーズにいかなかったため、研究の進行状況は、筆者としては十分であるとは言えない。しかし、研究目的の測定の低コスト化、高感度化などは達成されつつあるため、おおむね順調であると言える。
平成23年度に移動相使用量低減のために、現在用いている内径 8 mmのカラムから、セミミクロカラムなどの内径のより小さなカラムを用いる検討を行ったが、新規に導入した検出器が現在の構成では、セミミクロ化に対応しきれなかった。そのため、今後の方針としては、セミミクロ化のためのオプションパーツなどの導入やHPLC内部配管の入れ替えなどを行う。これにより、セミミクロカラムの採用が可能となり、移動相の使用量が現在の25%程度となり、測定のコストや移動相調整の手間を省くことができるのではないかと考えられる。また、引き続き試料前処理の検討を行い、新規測定法の開発を行う。
新規測定法のためのHPLC用分析カラムや、試料前処理用のカラム、移動相溶媒や、セミミクロ化のためのオプションパーツの購入を検討している。また測定操作の自動化のために、現在のそれぞれのHPLC構成装置を制御するコントローラーを新規に導入することを計画している。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Placenta
巻: 33 ページ: 24-30
10.1016/j.placenta.2011.10.007