研究概要 |
1.絨毛膜外絨毛細胞(EVT)において、S1Pの浸潤、遊走に関与する受容体サブタイプを同定するために、各受容体サブタイプに特異的な拮抗薬を投与し検討したところ、S1P2受容体は浸潤、遊走を抑制すること、S1P3受容体は浸潤、遊走を促進する傾向を認めた。EVT細胞株は、HTR-8/SVNeoに追加し、Hch-Epc細胞も使用して、再現性を確認したが、再現が確認された。さらにsiRNAを遺伝子導入し検討した結果も、同様であった。以上より、EVTにはS1P2,3が発現しているが、S1P2は浸潤を抑制し、S1P3は浸潤を促進する作用があることが証明された。さらにEVTにはSPHK1およびABCC1が発現していることが明らかとなり、内因性のS1Pが作用している可能性が示唆された。またS1P2,S1P3のいずれかが発現優位となるかについては、細胞密度によって変化することが確認された。以上より、初期胎盤形成の段階で、脱落膜に着床後形成されるcytotrophoblastの細胞塊であるcell columnではS1P2が発現優位であり、intermediate EVTではS1P3が発現優位となっている可能性が示唆された。また、S1P2受容体拮抗薬はEVT浸潤を促進するので、胎盤形成に作用する可能性が示唆された。 2.妊娠高血圧症候群症例と週数を合致させた正常妊娠症例で胎盤におけるSPHK1, ATXの発現を検討したが、発現には優位な変化は認めなかった。 3. 羊膜におけるS1P受容体の発現を確認し、陣痛後は陣痛前に比べSPHK1の発現が亢進し、S1Pによりcox-2の発現が促進することを確認した。これによりS1Pが妊娠末期に陣痛発来に関与していることが示唆された。
|