研究課題/領域番号 |
23791826
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
津田 弘之 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (40571328)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 横隔膜ヘルニア / ラメラ体 / 肺低形成 / 予防 |
研究概要 |
臨床データとして、我々はage-matchさせたCDH症例19例と呼吸機能に異常を認めなかったcontrol症例57例において羊水中ラメラ体数を測定し比較した。CDH群の羊水中ラメラ体数は15,600/μL、control群の羊水中ラメラ体数は61,700/μLであり、CDH群で有意にラメラ体数が少なかった(P < 0.05)。またCDH群19例の検討において、生存した13例の羊水中ラメラ体数1.6±0.7×104/μLに対し、死亡群3例の羊水中ラメラ体数は0.5±0.3×104/μLであり、有意(P < 0.01)に低値を示した。次に我々はSDラットにおいてday 21(term)で出生した新生児の肺組織と羊水を採取し、電子顕微鏡にてラメラ体の存在を確認した。ラットにおいてもII型肺胞上皮細胞内にラメラ体が認められ、さらにその大きさも1~2μmと、ヒトのラメラ体と同様の大きさであることが確認された。次に母獣ラットにnitrofen 100mgを内服させた後出生した胎仔の48.8%(61/125)でCDHが確認された。羊水中ラメラ体数はnormal群で3527.5±211.9/μL、CDH群で1564.2±358.9/μLであり、CDH群で値が有意に少なかった(P < 0.01)。また胎仔の肺重量はnormal群で0.143±0.024g、CDH群で0.071±0.022gであり、CDH群で有意に肺低形成であることが示された(P < 0.01) 。さらに肺重量と羊水中ラメラ体数には有意な相関関係が認められた(r=0.5762 P < 0.001)。次に、ラット肺組織に対し、ラメラ体の特異抗体であるABCA3の発現をWestern blotで確認したがCDH群とnormal群で有意差は認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先天性胎児横隔膜ヘルニアの羊水中ラメラ体数が、予後に相関していることを臨床的に証明でき、さらにラットにおいて横隔膜ヘルニアモデルを作成することにも成功した。同時に、ラットにおいても肺胞上皮細胞内や羊水中に、ヒトと同様のラメラ体が存在することも確認できた。したがって、本研究のbackgroundが確立していることが示された。また、ラット横隔膜ヘルニアモデルにおいても、ヒトと同様、羊水中ラメラ体数が肺のvolumeと強い相関を示していることが現時点でわかっており、今後もう少し検体数を増やしてさらなる検討が必要であるが、当初の仮説通りの結果が得られていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトでの検体数を増やして検討するとともに、ラットモデルの数も増やして今までの検討を行っていく。また以上の結果がまとまり次第、論文報告することを予定している。さらに、ラット横隔膜ヘルニアモデルにおいて、胎児期に発生する肺低形成を予防する薬剤治療につき検討を進めていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
妊娠ラット(pregnant day9)にnitrofen 100mgを内服させることによって胎仔横隔膜ヘルニアモデルを作成する。day 21(term)に開腹術を施行し、胎仔の体重と肺重量を計測し、さらに羊水と胎仔肺組織を採取する。羊水中のラメラ体数を測定し、胎仔肺重量との関係を調べる。また、採取した肺組織に対しラメラ体の特異抗体であるATP binding cassette A3 (ABCA3)を用いて免疫学的染色、RT-PCR、Western blotを行い、normal群とCDH群それぞれにおける発現の違いについて検討する。次にday9で母体ラットにnitrofen 100mgを投与した後、day18-19で塩酸ピルフェニドンを投与した治療群、day10-21で柴朴湯を投与した治療群、無治療群の3群に分け、それぞれの胎仔をday21(term)に娩出する。それぞれの群において分娩時に羊水を採取しラメラ体数を測定する。さらに出生した胎仔から肺組織を摘出し、肺重量測定や病理組織学的検討(肺胞面積の割合など)、そして免疫組織学的染色を行い肺低形成の程度、ラメラ体数の違い、サイトカイン発現の違いなどを各群間で比較検討する。
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