研究課題/領域番号 |
23791826
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
津田 弘之 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (40571328)
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キーワード | 横隔膜ヘルニア / ラメラ体 / 肺低形成 / 予防 / 柴苓湯 |
研究概要 |
臨床データとして、我々はage-match させたCDH 症例19例と呼吸機能に異常を認めなかったcontrol 症例57例において羊水中ラメラ体数を測定し比較した。CDH 群の羊水中ラメラ体数は15,600/μL、control 群の羊水中ラメラ体数は61,700/μL であり、CDH 群で有意にラメラ体数が少なかった(P<0.05)。またCDH 群19例の検討において、生存した13例の羊水中ラメラ体数1.6±0.7×104/μL に対し、死亡群3例の羊水中ラメラ体数は0.5±0.3×104/μL であり、有意(P<0.01)に低値を示した。次に我々はSD ラットにおいて、母獣にnitrofen 100mg を内服させた後出生した胎仔の48.8%(61/125)でCDH が確認された。羊水中ラメラ体数はnormal 群で352.8±21.2/mL、CDH 群で156.4±35.9/mL であり、CDH群で値が有意に少なかった(P<0.01)。また胎仔の肺重量はnormal 群で0.143±0.024g、CDH 群で0.071±0.022g であり、CDH群で有意に肺低形成であることが示された(P<0.01)。さらに肺重量と羊水中ラメラ体数には有意な相関関係が認められた(r=0.5762 P<0.01)。次に、ラット肺組織に対し、ラメラ体の特異抗体であるABCA3の発現をWestern blot で確認したがCDH 群とnormal 群で有意差は認めなかった。一方、CDH モデルにおける薬剤投与による検討では、塩酸ピルフェニドン(ピレスパ®)群では明らかな肺低形成予防効果は認めなかったが、柴苓湯群では肺重量(0.065±0.015g,0.073±0.012g; P
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先天性胎児横隔膜ヘルニアの羊水中ラメラ体数が、予後に相関していることを臨床的に証明でき、さらにラットにおいて横隔膜ヘルニアモデルにおいても、ヒトと同様、羊水中ラメラ体数が肺のvolumeと強い相関を示していることが示された。このことは、学術論文に投稿し、すでに掲載された。 一方、肺低形成予防に関する薬剤投与の研究に関しては、現在症例を蓄積しながら検討中である。妊娠母獣に対する柴苓湯の投与は現在胎仔肺低形成を予防する可能性が示唆されており、症例数の蓄積また、分子学的機構に関する研究を踏まえさらなる解析が必要であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
薬剤治療群の症例数を増やして検討する。 また、柴苓湯群が肺低形成を予防する機序について分子学的に検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ラット横隔膜ヘルニアモデルにおいて、柴苓湯投与による、胎仔肺重量を計測する。 また、胎仔肺組織、横隔膜組織を摘出し、肺の発達や形成に関与する遺伝子につきその発現変化につき検討を行う。 現在、注目している因子は、NGAL、チオレドキシン-2、カテプシンEなどである。これらをRT-PCR、免疫染色などで発現の違いについて検討していく予定である。
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