研究概要 |
先天性胎児横隔膜ヘルニア(以下CDH)はその発生率が約1/2,500であり、先天異常のなかでも比較的その頻度は高い。CDH児のmortalityは50-60%と高い。横隔膜ヘルニアでは、胎児期に肺低形成が生じるため、出生後の各種治療に反応しないことが予後不良の主因である。従って胎児期に肺低形成の程度を正確に予測すること、胎児期に生じる肺低形成を出来る限り予防することが臨床上重要である。今回我々は羊水中ラメラ体に注目し、CDH症例における肺低形成の程度を評価する客観的な指標として有用かどうかを検討した。 臨床データとして、我々はage-matchさせたCDH症例19例において羊水中ラメラ体数を測定し比較した。生存した13例の羊水中ラメラ体数1.6±0.7×104/μLに対し、死亡群3例の羊水中ラメラ体数は0.5±0.3×104/μLであり、有意(P < 0.01)に低値を示した。次に我々はSDラットにおいて妊娠9日目にnitrofen 100mgを内服させCDHモデルを作成した。day 21(term)で出生した新生児の肺組織と羊水を採取し検討した。羊水中ラメラ体数はnormal群で3527.5±211.9/μL、CDH群で1564.2±358.9/μLであり、CDH群で値が有意に少なかった(P < 0.01)。また胎仔の肺重量はnormal群で0.143±0.024g、CDH群で0.071±0.022gであり、CDH群で有意に肺低形成であることが示された(P < 0.01) 。さらに肺重量と羊水中ラメラ体数には有意な相関関係が認められた(r=0.5762 P < 0.001)。次に、ラット肺組織に対し、ラメラ体の特異抗体であるABCA3の発現をWestern blotで確認したがCDH群とnormal群で有意差は認めなかった。 以上より、羊水中ラメラ体は肺低形成予測の指標として有用であることが実証された。
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