研究課題/領域番号 |
23791831
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
清水 良彦 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (50422887)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 卵巣凍結 |
研究概要 |
本研究では霊長類のカニクイザルを用いて卵巣臓器凍結技術を確立することを目的としている。ヒトと同じ霊長類での凍結技術は将来のヒトへの臨床応用の基礎的データとして重要な意味をもつと考え本実験を遂行中である。卵巣臓器全体を卵巣動静脈をつけたまま凍結、融解し、自家移植する際に血管吻合を行って、卵巣全体を自家移植する方法をめざしている。 カニクイザルを用いた実験を行う上で動物の特性、飼育技術を身につけることがまず必須であると考え、動物センター主催の講習会などに参加した。そのうえで、研究者はカニクイザルを全麻下に腹腔鏡で卵巣を確認し、卵巣動静脈をつけたまま卵巣全体を摘出する技術を確立した。まずは実験を遂行する上での素地ができたと考える。 卵巣動静脈をつけたまま摘出した卵巣を凍結するための凍結保護剤の最適な条件を設定中である。一般的に用いられている凍結保護剤はDMSOやエチレングリコールであるが、最も適した濃度や平衡化時間などは未解明であることからヒトと同じ霊長類での検討は非常に大事である。また、緩慢凍結法で凍結を行うことを目的としているが、同様にその最も適した条件設定を検討中である。本実験の核となるデータを集積中である。 これらの実験結果の評価を行うために、凍結融解した卵巣の組織学的検討を行っている。HE染色による形態学的検討とTUNEL染色、Caspase-3染色を行い、凍結融解した卵巣への障害の程度を検討している。これらの組織学的検討に加え、卵巣組織、細胞がどの程度生存しているのかを直接的に調べるためにバイアビリティの検討を行う準備を開始した。死細胞の細胞膜のみを通過するPropidium iodide(PI)を用いる方法と、FSH添加によるエストロゲンの産生能力を比較する方法の2つの実験を準備中である。施行中の凍結融解方法が適正かどうかを検討するために必須の実験と考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に予定していた下記の実験がおおむね施行することができたので順調に進展していると判断している。 (1)カニクイザルから卵巣動静脈をつけたまま卵巣全体を摘出するための技術。ケタミン0.1ml/kg、キシラジン0.05ml/kgを大腿部に筋肉注射し、イソフルレン3%で麻酔を維持する。前腕部に点滴ルートを確保し、心電図モニター、酸素飽和度モニターを装着する。臍下正中切開で開腹し卵巣を動静脈を付けたまま摘出する。閉腹後、麻酔からの覚醒を確認した後ケージに戻す。12時間後より食事を再開し2週間後に抜糸する。卵巣を摘出する直前にヘパリンを1000単位静注しヘパリン化を行う。摘出した卵巣を4℃のヘパリン化した生理食塩水に浸漬すると同時に動脈からも1ml/分の速度で10分間還流する。その後、凍結保護剤に切り替え、0.5ml/分の速度で60分間還流した。 (2)凍結保護剤の最適な条件設定(本研究の核となる実験)凍結保護剤はLeivovitz L-15 Medium(無機塩類、アミノ酸、ビタミン、糖類を含む)にdimethyl sulphoxide(DMSO) 、ショ糖、10%胎児血清を加えたものを用いている。DMSO、ショ糖の濃度をそれぞれ0.5Mから3.0M、0.1Mから2.0Mの様々な条件で作成し、それぞれの凍結保護剤で緩慢凍結、融解をおこなった。室温から-7度までは-2度/毎分の冷却スピードでおこない、-7度から-30度までは-0.3度/毎分、-30度から-190度までは-50度/毎分で行った。融解は凍結していた卵巣を37度の温水中に浸けた後、融解液(Leivovitz L-15 Mediumに10%胎児血清、1.0MのDMSO、0.1Mのショ糖を加えたもの)に浸透した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は実験計画通り、下記の3つの実験を行っていく予定である。 (1)凍結保護剤のどの条件が最も卵巣への障害が少ないかを調べるためにさらにバイアビリティの検討を引き続き行う。ポジティブコントロールとして凍結していない卵巣、ネガティブコントロールとして凍結保護剤を使用せず凍結した卵巣を用いる。凍結融解した卵巣を1mmの厚さにスライスし、Leivovitz L-15 MediumにPIを加えた培養液で組織培養する。培養後、固定、切片を作成し、488nmのレーザーで励起して観察する。PIが取り込まれた死細胞は615nmの波長で蛍光を発するので蛍光を発する細胞が少ない方がバイアビリティが高いと判断できる。またFSH添加によるエストロゲンの産生能力を比較する。FSHを添加後、培養液中のエストロゲン濃度をELISAで測定していく。 (2)緩慢凍結法の最適な条件設定を行う。室温から-7度までは-2度/毎分、-7度から-30度までは-0.3度/毎分、-30度から-190度までは-50度/毎分の冷却スピードでおこなう群と、室温から-7度までは-1度/毎分、-7度から-30度までは-0.2度/毎分、-30度から-190度までは-10度/毎分で行う群の2群で比較し、上記と同様のバイアビリティの検討を行う。 (3)自家移植した卵巣の機能回復の評価を行う。設定した凍結保護剤と緩慢凍結法で凍結融解した卵巣臓器をもともとの個体に自家移植する。カニクイザルを開腹後、融解した卵巣を直ちに移植に供する。残存している対側の健常卵巣を新たに摘出し、その卵巣動静脈に融解後の卵巣動静脈の吻合を行う。通常の月経周期が回復するかどうか、月経周期に伴うエストロゲン、プロゲステロンの上昇を確認し、自家移植した卵巣が正常に機能しているかどうか判断する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験に必要な薬品やガラス器具などを購入する必要がある。実験動物(カニクイザル、70万円/1匹)は2匹購入予定としている。研究期間が2年間と限られているため効率よく研究を進めるために実験補助者を週に1日(月に5日)程度雇用する際の経費を計上する予定である。データが非常に多く出ることが予想され、今回の研究の解析のため、また情報漏出を防ぐためにインターネットと切り離されたデータ処理用コンピューターが必要と考えている。平成24年度には国内外への学会発表を広く行い、国際的に認められた論文に英文にて投稿出版することを目的としているため、学会の旅費とカラー印刷代を含む別刷代、論文校正費用が必要と予想される。
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