研究課題
本研究では霊長類のカニクイサルを用いて卵巣臓器凍結技術を確立することを目的とした。ヒトと同じ霊長類での凍結技術は将来のヒトへの臨床応用の基礎的データとして重要な意味をもつと考え本実験を遂行した。卵巣臓器全体を卵巣動静脈をつけたまま凍結融解し、自家移植する際に血管吻合を行って、卵巣全体を自家移植する方法をめざし下記の成果を得た。① カニクイサルを全麻下に腹腔鏡で卵巣を確認し、卵巣動静脈をつけたまま卵巣全体を摘出する技術を確立した。② 卵巣動静脈をつけたまま摘出した卵巣を凍結するための凍結保護剤の最適な条件を設定した。凍結保護剤はLeivovitz L-15 Medium(無機塩類、アミノ酸、ビタミン、糖類を含む)にDMSO、ショ糖、10%胎児血清を加えたものを用いた。DMSO、ショ糖の濃度をそれぞれ1M、1.5Mと設定した。室温から-7度までは-2度/毎分の冷却スヒードでおこない、-7度から-30度まては-0.3度/毎分、-30度から-190度までは-50度/毎分で行った。 ③ これらの実験結果の評価を行うために、凍結融解した卵巣の組織学的検討を行った。HE染色による形態学的検討とTUNEL染色、C aspase-3染色を行い、凍結融解した卵巣への障害の程度を検討した。コントロールの卵巣と比較し、TUNEL染色、C aspase-3染色が陽性となる細胞は約10-15%増加した。④ これらの組織学的検討に加え、卵巣組織、細胞がどの程度生存しているのかを直接的に調べるためにバイアビリティの検討を行った。死細胞の細胞膜のみを通過するPropidium iodide(PI)を用いる方法と、FSH添加によるエストロゲンの産生能力を比較する方法の2つの実験を施行した。PI法ではコントロールの卵巣との有意差は認めなかった。またエストロゲン産生能力も有意差を認めなかった。
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Gynecology and minimally invasive therapy
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Reprod Biomed Online.
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