研究概要 |
組織型は子宮体癌の主要予後因子であり、タイプ2子宮体癌、すなわち漿液性腺癌や低分化型類内膜腺癌は再発高リスク群として術後化学療法が推奨されるが、依然その予後は不良である。実際、2010年までに当科で治療を行った子宮体癌262例のうち再発高リスク群94例では、半数以上が抗癌剤に耐性を示してその5年生存率は65%と、低リスク群(100%)や中リスク群(98%)と比較して著しく予後不良であった(p<0.0001)。近年、多剤耐性癌では遺伝子発現が異なることが示されていることから、統合データベースであるNCI60および子宮体癌マイクロアレイデータであるGSE2109を用いてバイオインファオマティカルに各種制癌剤の感受性スコアを算出したところ、漿液性腺癌での感受性スコアはシスプラチン,ドキソルビシン,パクリタキセルで低い一方で、代謝拮抗剤のフルダラビン(p<0.001)や分子標的薬であるテムシロリムス(p<0.05)で高かった。子宮体癌細胞株HEC1Aは同様のスコアパターンを示し、再発高リスク型と考えられたため、同細胞株に対するフルダラビンの感受性効果を見たところ、試験管内での腫瘍細胞増殖が抑えられ、濃度依存性にCaspase3の発現が誘導され細胞死がもたらされることが分かっただけでなく、マウスでの投与実験でもシスプラチンと比較して有意に皮下腫瘍の増大が抑えられた(p<0.05)。以上より、バイオインフォマティクスを利用しながら再発高リスクであるタイプ2子宮体癌の薬剤感受性を解析することで、フルダラビンが多剤耐性子宮体癌で腫瘍抑制効果を示す可能性が示唆されたため、研究成果として論文発表した。フルダラビンは既に抗癌剤として血液腫瘍に用いられており、今後は、現行治療に耐性を示したタイプ2子宮体癌に適応拡大するべく研究を続けていく予定である。
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