研究課題/領域番号 |
23791838
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中村 織江 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任研究員(常勤) (40399613)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 子宮内膜細胞 / 核カテプシンL / 細胞増殖 / 核ArpC2 |
研究概要 |
研究実施計画に基づいて遂行した研究において、本年度は以下の結果を得た。1)CTLA-2αおよびCtsLの細胞質-核輸送に関する研究 ・CTLA-2αおよびCtsLに関し、細胞質-核輸送に直接的に関与する分子の同定には至らなかった一方で、子宮内膜細胞において、プロゲステロン刺激・未刺激の状態で核膜孔構成タンパクであるnucleoporin p62 (Nup62)の発現が変化すること、さらにプロゲステロン存在下でRNAiによりCtsLをノックダウンするとNup62の発現が大きく変化することを見いだした。以上のことから、子宮内膜細胞においてはステロイドホルモン刺激により核膜孔の構造や大きさが変化しており、そのことが分子の輸送パターンの変化に関係している可能性が示唆された。2)核CtsLと脱落膜細胞周期に関する研究 ・核におけるCtsLターゲット分子の一つである転写因子CDP/Cuxのアイソフォーム解析から、子宮内膜細胞ではプロゲステロン刺激によりp90およびp110アイソフォームが増加することを明らかにした。また、RNAiによるCTLA-2αをノックダウンはプロゲステロン存在下にも関わらずCDP/Cuxアイソフォームをプロゲステロン未刺激の状態に戻した。このことから、核CtsLがCTLA-2αとの結合の有無によりCDP/Cuxアイソフォーム生成に関与することが示唆された。さらに、CTLA-2α過剰発現細胞株を用いた細胞増殖アッセイにより、子宮内膜CTLA-2αは細胞増殖を促進することを明らかにした。3)核ArpC2に関する研究 ・核ArpC2の会合分子の探索を目的として、ArpC2過剰発現安定細胞株を樹立した。その他)今後の研究をよりin vivoに反映しやすい条件で行うために、マウス子宮内膜間質細胞株を樹立した(発表準備中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CTLA-2αおよびCtsLの細胞質-核輸送を解析するために、Tag融合CTLA-2α、CtsL発現vectorの作製を試みたが、CtsLはタグの種類に関わらず正確な立体構造を作らないため方法として適さないことが分かった。CTLA-2αに関してはタグ融合タンパクの発現には成功したが、安定発現株での発現量が低く、タグを用いてのpull-down assayは量的に困難が予想された。タグ無しの場合、CTLA-2α安定発現株は非常に高い発現を保持しているため、CTLA-2α抗体を使用した免疫沈降に変更して研究を続行することとした。CTLA-2αおよびCtsLがCDP/Cuxアイソフォーム変化に関与していることを明らかにしたのは研究の進展である。また、核CtsLが核膜孔構造変化に関与しうると言う新たな知見は本研究において非常に重要な発見である。 CTLA-2αおよびCtsLが転写因子の調節に関与している点に関し、CTLA-2α過剰発現細胞株における顕著な細胞増殖速度の増加を確認したことは、妊娠初期の脱落膜化の際に細胞が急激に増殖する事象と相関しており研究の進展と評価して良い。 核ArpC2の解析に関し、核タンパクのpull-down assayまたは免疫沈降に必要な核タンパクを準備するには相当量の細胞を準備する必要があり、当該実験を始めるために当初の予定以上の時間を費やした。 新しくマウス子宮内膜細胞株を樹立したことで、一層効率よい研究の進展が望まれる。
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今後の研究の推進方策 |
CTLA-2αおよびCtsLの細胞質-核輸送に関する研究に関しては、次年度以降も当初の計画通りCTLA-2αとCtsLの核における輸送に関与する会合分子を探索するが、CtsL過剰発現は実現困難なため行わず、CTLA-2αの解析から得られた分子をCtsLで検証することとする。また、核CtsLと核膜孔タンパクとの関係は本研究テーマの解明に対し重要であると考えられるため、新たに追加研究とする。 核CTLA-2αと核CtsLの転写因子調節による細胞増殖への関与に関し、FACSによる詳細な細胞周期解析を行う。また、細胞周期調節因子であるサイクリンとCDKの発現を解析し、脱落膜化に際した細胞増殖メカニズムを明らかにすることを目的として研究を行う。さらに、in vivoでの検証実験を行い、in vitroで得られた事象の生物学的意義を明確にすることを目的とする。 核ArpC2の解析に関し、核構造を理解する上での新しい知見が得られるテーマであると考えられるため、本年度樹立した安定発現株の核ライセートを用いた免疫沈降と質量分析の手法により会合分子の同定を行うことを目的として研究を行う。また、RANiの手法を用いた内在性ArpC2ノックダウンと核内移行シグナル(NLS)-ArpC2および核外移行シグナル(NES)-ArpC2それぞれの発現を組み合わせた実験系を用いて核ArpC2の機能解析を行う。なお、NLS-ArpC2およびNES-ArpC2それぞれの発現ベクターは構築済みである。
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次年度の研究費の使用計画 |
請求予定額に準じ、適正な執行を行う。
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