研究課題/領域番号 |
23791842
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
若橋 宣 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 医学研究員 (80596651)
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キーワード | 上皮間葉移行 |
研究概要 |
【VAV1発現はE-cadherin transcriptional factor:Slugの発現を促進する。】我々は先に卵巣癌細胞株(SKOV3)にVAV1発現ベクターを導入しVAV1恒常的発現細胞株(SKOV3-VAV1)を樹立している。このSKOV3-VAV1はVAV1発現に依存してE-cadherin発現が低下することを解明しており、さらなるメカニズムを解明するためにE-cadherinの転写因子であるSlug Snail発現の検討をおこなった。その結果、特にSlug発現の促進がタンパクレベル及びmRNAレベルで認められた。また、このSlug発現はVAV1-siRNAによるVAV1発現の抑制とともに低下していくことから、VAV1がこれら転写因子を誘導することで、E-cadherin発現の低下を誘導し、卵巣癌の上皮間葉移行に関与してくる可能性を示唆している。 【VAV1のE-cadherin発現抑制はVAV1-Rac1の経路を介していない】 VAV1のSlugを通じたE-cadherinの発現制御が、VAV1-Rac1の経路を介しているかどうかを、Rac1阻害剤をもちいて検討した。当初はRac1阻害剤によりE-cadherinの発現が回復することを予測していたが、Rac1阻害剤ではE-cadherinの発現を回復することはできなかった。 VAV1にはRac1を通じた経路以外にも作用する経路が知られており、VAV1-Rac1経路以外の経路がE-cadherinの発現制御にかかわっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
VAV1発現が卵巣癌の予後に影響をあたえる原因として注目したE-cadherin制御の分子学的メカニズムの一端が明らかになり、今後の展望に期待がもてる。しかしながら、VAV1がどのような経路を介してE-cadherinの制御を行っているかは、明確ではなく。今後さらなる検討が必要と考える。 EMTに関連する他のマーカーである、N-cadherin,Vimentin発現についても検討が必要であり、さらにはMMP, Fibronectinといった、浸潤に寄与する因子についても随時検討が必要と考える。
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今後の研究の推進方策 |
VAV1がどのようにE-cadherinの制御をおこなっているかは、明らかにすべく、考えられるpathwayに対して、タンパク発現の検討をおこなう。また、各種阻害剤でE-cadherinの発現が戻るかどうかを検討し、VAV1のEMTに対する影響が制御できるかどうかを検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
各種阻害剤、抗体の購入をおこなう。 さらにVAV1-SKOV3について遺伝子シークエンスなどを用いて、VAV1のE-cadherin制御経路の解明をおこなう。
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