研究概要 |
扁平上皮癌で明らかに増加する蛋白として我々が同定した、Transgelin, Protein disufide-isomerase(PDI), HSP70, HSP27のうち、まずはHSP70に着目し、機能解析を行った。【方法】ヒト子宮頸癌細胞株 ( BOKU、ME-180、SiHa、SKG l、SKG ll、SKG llla ) においてHSP70の発現をWestern blottingで確認した。SiHa、SKG llにおいてsiRNA法によりHSP70の発現を抑制したうえで、以下の具体的な機能について解析した。1. 増殖能および細胞周期、アポトーシス、2. 遊走能、3. 浸潤能について検討した。さらにCDDP添加によるストレス下でのHSP70の役割を検討する目的で、4. アポトーシス細胞の割合を検討した。【成績】 正常細胞であるケラチノサイトと比較し、すべての子宮頸癌細胞株でHSP70の発現は増加していた。機能解析の結果は、1. HSP70の発現抑制により増殖能は有意に抑制され、細胞周期はG2/M期に停止が認められた。なお、アポトーシスには有意差を認めなかった。2, 3. HSP70の発現抑制により遊走能および浸潤能は有意に抑制された。 4. HSP70の発現抑制によりCDDP添加で誘導されたアポトーシス細胞の割合は有意に増加した。【結論】子宮頸癌におけるHSP70の発現抑制は癌の増殖、浸潤・転移に抑制的に作用するだけでなく、抗癌剤の作用を増強させることが示された。HSP70の発現抑制は従来の治療に加えた新規の癌分子標的治療としての抗腫瘍作用の増強が期待できると考えられた。
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