研究概要 |
オステオポンチン (OPN) は、がん細胞やがん組織に浸潤する炎症性細胞によって産生されるリン酸化蛋白であり、CD44や種々のインテグリンと結合して、がん細胞の遊走や接着を促進する。また、がん組織中、あるいは血中OPNレベルの上昇は、がんの増殖や転移、生命予後の悪化と関連することが知られており、これを制御することが課題となっている。健常人末梢血単核球をインバリアントNKT (iNKT) 細胞の抗原であるα-galactosylceramide (α-GalCer) にて刺激して、α-GalCer特異的iNKT細胞の増殖を誘導した。さらに高速自動セルソーターを使用して、Vα24+Vβ11+6B11+の発現を指標にiNKT細胞を分離した。これとα-GalCerを負荷した樹状細胞 (DC) との共培養系において、DCにおけるIL-12p70 (細胞性免疫応答誘導因子) 産生が促進され、その一方でOPN産生が著しく抑制されることを見出した。CD40L発現線維芽細胞、あるいはLPSにて刺激したDCにiNKT細胞の液性因子を加えた場合でもこの観察が認められることから、責任因子はiNKT細胞が産生する液性因子中に存在することが示唆された。中和抗体を用いた試験により、iNKT細胞が産生するIL-10がOPN産生に促進的であり、一方、IL-4, IL-13, IFN-γが抑制的に作用していることが明らかになった。さらに、これらのリコンビナントサイトカインを用いた解析で、IL-4, IL-13, IFN-γが存在すれば、IL-10によって誘導されるOPN産生を抑制できることが明らかとなった。以上より、iNKT細胞はDCにおけるIL-12p70産生を促進することで細胞性免疫応答を促進するとともに、OPN産生を抑制することで、がんの増殖や転移に抑制的に作用することが示唆された。
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