子宮内膜症と子宮内膜上皮の上皮間葉転換(EMT)の関連を明らかとするためにin vitroでの上皮間葉転換の再現および薬剤による阻害を試みた。子宮内膜初代培養細胞および不死化子宮内膜上皮細胞を用いて培養液中に上皮間葉転換誘導物資であるTGFβおよびTNFαを添加して培養を行った。リアルタイムPCRおよびウエスタンブロット解析でTGFβおよびTNFαの添加によりEカドヘリンの発現低下とNカドヘリンの発現上昇、いわゆるカドヘリンスイッチがおこることが判明した。しかしながらトラニラストやBMP7を添加してもこのカドヘリンスイッチを阻害することはできなかった。細胞の形態は敷石上の形態を示したコントロールに対してTGFβおよびTNFα添加では紡錘状の形態変化を示し、細胞形態上EMTを起こしていることが示唆された。しかし、BMP7やトラニラストの添加によりこの形態変化を抑制することはできなかった。EMTの特徴の一つである細胞接着能についても解析をおこなった。不死化子宮内膜細胞においてコントロール、TGFβのみ、TNFαのみ、TGFβおよびTNFαの両者の添加で細胞の接着能を比較したところTGFβおよびTNFα両者の添加において最も細胞接着能が高いことが明らかとなった。さらにTGFβおよびTNFαの添加により増強した細胞接着能はトラニラストの添加により阻害された。子宮内膜細胞移植マウスの作成においては腹腔内の細胞移植をおこなったものの生着した細胞数がきわめて少なかったためにその後に計画していた薬剤投与の解析にまで至らなかった。腎被膜下の移植については技術的に行うことができなかった。
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