研究課題
近年、薬物代謝に関与する一塩基多型(SNP: single nucleotide polymorphism)が数多く見出され、SNP解析は薬物療法における個別化医療としての応用が期待されている。本研究では、正常細胞と癌幹細胞の生物学的特性を共通して規定する因子としてのSNPに着目し、SNPの有無に基づいて子宮体癌および卵巣癌の標準的術後化学療法(パクリタキセル+カルボプラチン併用療法:TC療法)の効果を予測できるシステムを開発し、さらに分子標的薬の関連経路との相関から治療適応の判別に有用なバイオマーカーを探索することを目的とした。術後化学療法としてTC療法を施行した子宮体癌もしくは卵巣癌症例(81例)を対象に、TC療法中の有害事象の指標としての好中球減少の程度と効果の指標としての無増悪生存期間(PFS)との相関性を解析した。この結果、TC療法中の好中球減少が高度であった群のPFSは有意に良好であり(p<0.01)、多変量解析においても好中球減少は独立した予後因子であった(HR=2.2, p<0.01).同意が得られ血液検体が採取された上記とは別の子宮体癌もしくは卵巣癌症例(63症例)を対象に、血中正常リンパ球から抽出したDNAを用いて網羅的SNP解析(Illumina社)を実施した。TC療法時の好中球減少の程度で分けた2群間で統計学的に差の見られたSNPを選別し、好中球減少と相関するSNPを、薬物代謝関連遺伝子上を中心に抽出することができた。この中から、良好なPFSとも相関しうる5つの候補SNPを選別した。さらに、好中球減少を予測する最適なSNPの組み合わせを判別分析にて検討したところ,タキサン代謝関連遺伝子を中心に20個のSNPを抽出できた。TC療法において、これらの2剤併用時の薬物反応と相関する特定のSNPを選別することができた。これらは化学療法の毒性の予測と同時に、治療効果を予測する因子としても有用である可能性がある。
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臨床婦人科産科
巻: 67 ページ: 474-484
Molecular and Clinical Oncology
巻: 1 ページ: 799-804