研究課題/領域番号 |
23791855
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
村上 功 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70445237)
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キーワード | ヒトパピローマウイルス / メチル化 / エピジェネティックス / バイオマーカー |
研究概要 |
平成24年度は、日本で感染者の多いHPV16型・18型・52型・58型に感染した臨床検体のメチル化頻度やパターン、子宮頸腟部における炎症および腫瘍性病変におけるサイトカインの解析を実験計画とした。 HPV16型・52型・58型でE6遺伝子、LCR領域でメチル化が認められなかったのに対し、L1遺伝子では高率にメチル化が認められた。さらにL1遺伝子のメチル化頻度と病変の進行度に関連が認められた。また、無治療のcervical intraepithelial neoplasia (CIN)1・2症例のメチル化頻度と予後を検討したところ、HPV52型感染症例では両者の間に関連が認められた。 L1遺伝子のメチル化頻度と病変の進行度、予後の間に関連が認められ、さらにこの関連性はHPVの型に共通な現象であった。L1遺伝子のメチル化頻度は子宮頸部腫瘍の診断的バイオマーカーとしてだけではなく予後バイオマーカーとしても有用であることが示唆された。 細胞診結果と相関したサイトカインはGM-CSF(p=0.015) とMCP-1(p=0.004)であった。GM-CSFはHPV感染と関係なくHSILでNILMとLSILに比べ高値を示した(p=0.009)。MCP-1はhigh risk HPV感染群においてHSILでNILMとLSILに比し低値を示した(p=0.008)が、low risk HPV感染群とHPV非感染群では病変間の有意差はなかった。 GM-CSFとMCP-1はともに抗腫瘍免疫応答を誘起するサイトカインであり、CINのhigh risk HPV感染例では病変進行とともにMCP-1は発現低下し免疫逃避が生じると考えられた。一方で、GM-CSFの発現上昇は宿主の抗腫瘍免疫応答が誘起されていることを示唆していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、HPV52型、58型 L1遺伝子のメチル化頻度と子宮頸部病変の進行度に関連性を得ており、HPVL1遺伝子のメチル化頻度が診断的バイオマーカーとして有用であることが示唆された。また、HPV52型 L1遺伝子のメチル化は病変の予後と相関があり、CINに対する診断的バイオマーカーだけではなく、予後バイオマーカーとなる可能性が示唆された。 また、細胞診異常に関連したサイトカインの検討についても結果が得られている。 以上の経過より、平成24年度の実験計画の大部分は順調に進展していると考えられる。平成24年度末にHPV52型・58型感染検体を新たに得ており、これらを解析することでさらに精度の高い結果が得られることが予想される。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度にHPV52型・58型に感染している臨床検体を新たに20症例得ることができた。今後はこれら検体の解析を実施予定としている。平成24年度に有意差を認めなかった、HPV58型に感染した無治療のCIN1・2症例のメチル化頻度と予後の関連を中心に解析する。平成24年度に得られた結果、25年度に得られるであろう結果よりL1遺伝子のメチル化頻度が子宮頸部腫瘍のバイオマーカーとなりうることを結論付けることが可能であると推測する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度にHPV52型・58型に感染している臨床検体を新たに20症例得ることができた。検体数を増やすことでより精度の高い結果となることが期待できる。 未使用額は新たな臨床検体の解析に充てるとともに、平成23年度、24年度に得られた実験結果と合わせ学会発表経費、論文掲載費に充てることとしたい。
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