研究課題
本研究では、①中咽頭癌症例におけるHPV感染の関与について、②HPV陽性中咽頭癌の治療成績、特に化学放射線療法の治療成績について、③中咽頭癌症例におけるHPV感染とp16発現の関与に関する検討を行った。中咽頭癌症例におけるHPV感染の関与を明らかにするために、当科で加療を行った中咽頭癌症例71例を対象にmultiplex-PCR法を用いてHPV感染の検出を行った。中咽頭癌71例中23例(32%)がHPV陽性であったが、対照群として正常扁桃78例および下咽頭癌41例は全例HPV陰性であった。本研究により日本人中咽頭癌症例におけるHPV陽性率は欧米に比べると高くはないものの、一部の中咽頭癌の発症にHPV感染が関与していることが明らかとなった。HPV陽性中咽頭癌の治療成績に関する検討ではHPV陽性例の方が陰性例に比べ生存率は良好であった。化学放射線療法施行症例においても同様の結果となり、これらの結果は欧米での報告と一致していた。上記について国内外の学会で報告し、英文誌International Journal Clinical Oncologyおよび国内誌である頭頸部癌において報告した。中咽頭癌症例91例を対象に行ったHPV感染とp16発現の関与に関する検討では、HPV陽性であった29例中24例(83%)がp16陽性で、HPV陰性であった62例中7例(11%)がp16陽性であった。p16陽性例の方が有意に生存率は良好であったが、HPV陰性p16陽性例の予後はHPV陰性p16陰性例と同様に不良であったことからp16の発現がHPV感染の完全なsurrogate markerとはなり難いことを明らかにした。上記について国内外の学会で報告し、国内誌である頭頸部癌において報告した。これらの研究内容は日本人症例においての報告はこれまで存在せず、本研究によって日本人症例における頭頸部癌とHPVとの関連について臨床的および分子生物学的アプローチにより明らかとなった。
すべて 2013
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