細胞内の全タンパク質を解析するプロテオミクスの手法の中でも中分子・高分子タンパク質をターゲットにした多重蛍光標式アガロース二次元電気泳動法(アガロース2D-DIGE)を使用して頭頸部扁平上皮癌の新規予後マーカーとなる可能性のある癌組織で発現の高いプレクチンというタンパク質を同定した。頭頸部癌細胞株を用いた機能解析によりプレクチンの発現低下が頭頸部癌細胞の増殖・遊走・浸潤の抑制に関わっていることを解明した。さらに、頭頸部癌の低い生存率に関わっていると言われているインテグリン・カドヘリンよりもプレクチンの方が頭頸部癌患者の予後に高い相関性を認めた。そこで、頭頸部扁平上皮癌患者における臨床病理因子の単変量解析を行い、性別・年齢・腫瘍部位・分化度・ステージ・プレクチン・インテグリン・カドヘリンの発現を調べた。すると、ステージとプレクチンの発現とカドヘリンの発現に予後との有意な差が見られた。さらに、単変量解析によって有意差が見られたステージ・プレクチンの発現・カドヘリンの発現の3因子について多変量解析を行ったところ、すべての因子が独立した予後因子と考えられた。その結果、プレクチンの発現が頭頸部癌細胞の増殖・遊走・浸潤に関与することが示唆され、今後、頭頸部扁平上皮癌の新規予後マーカーになる可能性が高まった。今後は血液中の微量なプレクチンの断片化ペプチドなどを定量することにより、早期診断または再発診断などに応用できると考えられる。
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