研究課題/領域番号 |
23791876
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
吉川 直子 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (50400924)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 頭頸部癌 / マイクロRNA |
研究概要 |
下咽頭癌・食道癌は、集学的治療がなされる現在においてもなお予後不良な癌の一つであり、将来的には新規治療法・診断法の開発が望まれている。その為には、現在のゲノム科学的な手法を駆使して、下咽頭癌・食道癌の新規分子ネットワークを総合的に解明していく事が不可欠であると考えられる。近年、低分子核酸であるマイクロRNAが癌遺伝子・癌抑制遺伝子として機能し、多くの癌関連遺伝子を制御している事が示されつつある。そこで、ヒト扁平上皮癌の発生・進展・転移に関与するマイクロRNAを見出すため、臨床検体を用いた下咽頭癌および食道癌におけるマイクロRNA発現プロファイルを作成した。2つのプロファイルから、miR-375が癌組織において共通して発現低下している事が判明した。そこで、miR-375のヒト扁平上皮癌における機能を検討した。ヒト扁平上皮癌由来細胞株にmiR-375を核酸導入する事により、癌細胞の増殖・浸潤が顕著に抑制された。この事から、miR-375はヒト扁平上皮癌において癌抑制マイクロRNAとして機能する事が証明された。次に、miR-375が制御する遺伝子ネットワークを解明するために、miR-375導入細胞株を用いてゲノム解析を施行した。解析の結果、miR-375は、AEG-1/MTDH遺伝子を直接制御する事が示された。AEG-1/MTDHをノックダウンした機能解析から、AEG-1/MTDHはヒト扁平上皮癌において癌遺伝子機能を有することが示された。更に、ヒト扁平上皮癌臨床検体におけるAEG-1/MTDHの発現を調べた結果、癌組織で発現が亢進している事が判明した。以上の解析により、ヒト扁平上皮癌において、癌抑制型miR-375の発現抑制により癌遺伝子であるAEG-1/MTDHの発現亢進が惹起される新規分子ネットワークの一端が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下咽頭・食道扁平上皮癌臨床検体を用いたマイクロRNA発現解析を施行し、扁平上皮癌マイクロRNA発現プロファイルを作製した。このプロファイルから、癌抑制型マイクロRNAの探索に成功した。これらマイクロRNAを基点とした解析から、扁平上皮癌の新規分子ネットワークの探索が可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
扁平上皮癌における癌抑制型マイクロRNAの探索が進んでおり、これらマイクロRNAが制御する分子ネットワークの解析を継続することにより、扁平上皮癌の新規の分子ネットワークが明らかになる。分子ネットワークの解明は、扁平上皮癌の新規診断法や治療法の糸口となる情報を提供する研究であると考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
マイクロRNAが制御する分子ネットワークの解析から選択した、癌関連遺伝子の機能解析が必須であり、siRNA関連試薬、細胞増殖抑制機能・アポトーシス誘導能・遊走能・浸潤能を調べるための消耗品類の予算が必要であると考えている。
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