近年、タンパクコード遺伝子の発現調節に関わるRNA分子として、タンパク質をコードしない機能性RNAの一つであるmicroRNA(miRNA)が注目されている。miRNAは、配列特異的にタンパクコード遺伝子を標的として、その分解や翻訳を阻害する事で遺伝子の発現を制御している。miRNAの発現異常は、癌の発生、進展、転移において重要な役割を担っている事が報告されている。下咽頭および食道扁平上皮癌のmiRNA発現プロファイルから、miR-218が発現抑制されている事が認められ、癌抑制型miRNAである事が示唆された。そこで、miR-218を癌細胞株に核酸導入し、癌抑制機能について検討を行った。その結果、miR-218は、癌細胞の浸潤・遊走に関与する癌抑制型miRNAである事が示された。更に、miR-218が制御する標的遺伝子を探索した結果、Laminin-332の構成タンパクの一つであるLAMB3を見出した。Laminin-332は、細胞の基底膜を構成する主要なタンパク質の一種であり、細胞の接着、遊走、増殖に関与する報告がある。miR-218の発現抑制によるLAMB3の発現異常は、ヒト頭頸部扁平上皮癌の転移に大きく関与する事が示された。
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