研究課題/領域番号 |
23791878
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金谷 佳織 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90456129)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 嗅覚 |
研究概要 |
ウイルスに対する宿主免疫応答に伴う嗅上皮傷害について解析するため、ウイルス感染における免疫モデルとして用いられるPoly(I:C)を3日間マウスに経鼻投与した。初回点鼻後3日目の時点で組織傷害の強い部位では成熟嗅神経細胞が上皮から脱落、変性し、9日目には成熟嗅神経細胞は著明に減少していた。そして約1ヶ月で嗅上皮の再生が認められた。次にToll-like receptor signal pathwayの転写因子であるNFκBの活性化を免疫組織染色によって確認した。また最終産物の1つである好中球遊走因子MIP-2の発現亢進をELISA法で確認した。各種炎症細胞マーカーに対する免疫組織染色によりPoly(I:C)投与後嗅粘膜に好中球、マクロファージ、Tリンパ球などの炎症細胞が浸潤することがわかり、特に好中球浸潤の強い部位で嗅上皮傷害が著明であったことから好中球が主要な組織傷害因子であることが推察された。そこで好中球と嗅上皮傷害の関連性を調べるため好中球エラスターゼ阻害薬をPoly(I:C)とともに投与したところ嗅上皮傷害が抑制された。また好中球減少モデルマウスを作成し、これにPoly(I:C)を投与した場合も嗅上皮傷害が抑制された。以上の結果よりウイルス感染時の嗅上皮傷害に好中球が関与していることが示された。次にPoly(I:C)経鼻投与によりマウスの嗅覚が実際に障害されているかどうかを確かめるため、成熟嗅神経細胞の最も少ない時期(初回点鼻後9日目)に嗅覚行動実験(olfactory habituation-dishabituation test)を施行したところ、嗅覚障害が生じていることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度予定していた電子顕微鏡を用いたPoly(I:C)投与による嗅上皮の微細形態の変化の解析および嗅球の構造変化に関する検討が未施行である。来年度予定していたPoly(I:C)点鼻による嗅上皮傷害に対する薬物療法の検討を先に開始したため今年度内に施行できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)本年度施行できなかった上記解析(2)嗅上皮傷害後の神経上皮再生にかかわるシグナル応答の解析を行う。(3)Poly(I:C)経鼻投与による嗅上皮傷害を抑制する薬物療法(ステロイド、ケミカルメディエーター阻害薬、アポトーシスシグナル阻害薬など)について検討を行う。(4)加齢変化、ホルモン状態の変化が嗅粘膜免疫応答と神経上皮傷害に与える影響の解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記研究のための実験動物および飼料の購入、各種抗体、試薬類の購入する予定である。またこれまでの成果を国際学会等で発表予定である。
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