研究課題
ウロキナーゼは血栓溶解剤として臨床応用されている薬剤であるが、近年ウロキナーゼレセプターに作用後、MAPK/ERK経路に作用してアポトーシスを抑制することが示されている。この薬剤の内耳への応用を検討した。ラット内耳の培養系を用い、内耳アポトーシスをきたす硫酸カナマイシン投与下におけるウロキナーゼのアポトーシス効果を検討した。この際、ウロキナーゼに加えてウロキナーゼインヒビターも投与した場合を同時に検討した。その結果、ウロキナーゼを投与した群では有意に内耳有毛細胞の障害率が軽減されていたのに対して、ウロキナーゼインヒビター同時投与群では内耳有毛障害は軽減しなかった。続いて内耳硫酸カナマイシン投与下でMAPKの一種P38の発現を検討したところKMに加えてウロキナーゼを投与した群においてP38の強い発言を認めた。ウロキナーゼ投与に伴うP38の役割を検討するため硫酸カナマイシン/ウロキナーゼ投与下にP38インヒビターを投与し有毛細胞に対する影響を検討した。その結果P38インヒビターを投与した群で有意に有毛細胞の障害が増加した。上記結果からはウロキナーゼはP38の発現を通じて有毛細胞のアポトーシスを抑制する可能性が示唆された。最終年度には、ウロキナーゼのらせん神経節細胞に対するアポトーシス抑制効果を検討した。グルタミン酸によるらせん神経節細胞培養系障害系においてウロキナーゼを投与した群では非投与群に比べて障害率が有意に低下しおり、ウロキナーゼによるらせん神経節細胞障害予防効果が示唆された。この結果はウロキナーゼの内耳治療への可能性を示唆するものであり、今後の内耳治療戦略野一つの手段として臨床応用への期待ができるものと考えられる。
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