研究課題/領域番号 |
23791881
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤本 千里 東京大学, 農学生命科学研究科, 特任研究員 (60581882)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 味覚受容体 / TRPチャネル / カルシウムイメージング |
研究概要 |
酸味受容体候補PLD1L3/PKD2L1複合体のチャネルポア領域の同定を目指した。推定ポア領域のグルタミン酸・アスパラギン酸残基の点変異が、Ca2+透過性を低下させると仮定した。PKD1L3の推定ポア領域には、アスパラギン酸残基(D2049)が1つとグルタミン酸残基(E2072)が1つ存在し、PKD2L1の推定ポア領域には、3つのアスパラギン酸残基(D523, D525, D530)が存在する。そこで、PKD1L3全長を発現ベクターpDisplayに挿入したコンストラクト(PKD1L3-FLと命名) とPKD2L1全長をpDisplayに挿入したコンストラクト(PKD2L1-FLと命名)を作製し、これらを鋳型として各種点変異体を作製した。アミノ酸点変異は、アスパラギン酸、グルタミン酸を、それぞれアスパラギン、グルタミンに置換し、中性化するように導入した。過去の報告により、PKD1L3とPKD2L1の両分子は、HEK293T細胞に共発現させると細胞表面へと移行することが知られている。そこで、PKD2L1-FLとPKD1L3各種変異体の共発現、および、PKD1L3-FLとPKD2L1各種変異体の共発現により、両分子のHEC293T細胞表面への移行が認められるかを細胞表面発現解析法にて観察したところ、いずれの共発現においても細胞表面への移行が認められた。続いて、PKD2L1-FLとPKD1L3各種変異体の共発現、および、PKD1L3-FLとPKD2L1各種変異体の共発現により、25mMクエン酸(pH=2.7)に対する応答が認められるかを、Ca2+イメージング法を用いて解析したところ、PKD2L1のD523の点変異体において、Ca2+透過性が低下した。以上より、PLD2L1のD523がPLD1L3/PKD2L1複合体のカルシウム透過性を決定することが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究計画は、酸味受容体候補PLD1L3/PKD2L1複合体のチャネルポア領域の同定をめざすことであった。これまでの研究で、PLD2L1の523番目のアスパラギン酸残基がPLD1L3/PKD2L1複合体のカルシウム透過性を決定するという知見を得ており、研究の目的は概ね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
酸味受容体候補PLD1L3/PKD2L1複合体の酸応答機能に重要な領域の解明を目指す。これまでの当研究室における研究成果から、PKD2L1のC末端細胞内領域に存在するEF-handドメインとcoiled-coilドメインが酸応答に不要であり、PKD1L3のC末端細胞内領域は酸応答に重要であることが示唆されている。PKD1L3とPKD1L2やPKD1、PKD2L1とPKD2といった各種キメラ体を作製し、酸応答に重要な領域の特定を試みる。また、酸味受容体候補PKD1L3/PKD2L1複合体の多量体分析を行うことを計画している。BN-PAGE法やショ糖密度勾配法を用いて、多量体分析を行う事を計画している。
|
次年度の研究費の使用計画 |
細胞培養用器具と試薬に400,000円、および、その他分子生物学用試薬に200,000円使用する予定である。また、国内旅費に150,000円、外国旅費に300,000円使用する予定である。以上、1,050,000円の使用を予定している。
|