研究課題/領域番号 |
23791886
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
川岸 久太郎 信州大学, 医学部, 助教 (40313845)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 嗅覚機能 / 正常発達 / 加齢変化 |
研究概要 |
本研究では新生児期(P0)、哺乳中期(P7)~後期(P14)、若年期(4w)から老齢期(24m)までの正常な雄雌のラットを用い、様々なステージにおける嗅神経細胞数をステレオロジーの手法を用いて明らかにする事を目的としている。 本年度は新生児期(P0)~若年期(8w)までの動物を作成し、嗅覚器を含む頭蓋骨を摘出した後、EDTA溶液にて脱灰し薄切標本を作製した。その後標本を、免疫組織化学法を用いて抗OMP抗体にて染色を行い、鼻腔内の各嗅覚器の成長に伴う変化を数値化するとともにステレオロジー解析装置(Stereoinvestigator:MBF Bioscience,USA )を用いて各嗅覚器のOMP陽性嗅神経細胞数を計測した。 その結果、頭蓋骨の大きさは日齢・週齢とともに性差なく同程度の大きさで成長することが明らかになった。P0~8w齢において鼻腔の前後長は約4倍となることが明らかとなった。また、鼻腔内には主嗅上皮(Main Olfactory Epithelium:MOE)以外にもGruenberg Ganglionや鋤鼻器(Vomeronasal Organ:VNO) 、Septal Organ (SO)が存在している。これらの嗅覚器も成長に伴い前後長が伸長していることが明らかとなった。 一方鋤鼻器(VNO)に注目してみると、その前後長は雌雄で大きな差が認められないにもかかわらず、OMP陽性嗅神経細胞数は新生児期から幼少期には雌雄で差があり、P0雄では17000- 18000に対しP0雌では3500‐5000と、特に雌で少ない事が明らかとなった。従来からの報告では雌の鋤鼻器自体が小さくなる旨の報告があったが、我々の研究では前後長は性差がないにもかかわらず、雌雄でOMP陽性嗅神経細胞数が3-5倍程度異なることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では新生児期(P0)、哺乳中期(P7)~後期(P14)、若年期(4w)から老齢期(24m)までの正常な雄雌のラットを用い、様々なステージにおける嗅神経細胞数をステレオロジーの手法を用いて明らかにする事を目的としている。 新生児期から幼少期さらに8wまでの動物・標本作成はすでに完了・進行している。現在3m~24mまでの長期生存例の動物・標本の作成が行われている。 8w齢までの動物においては抗OMP抗体による免疫組織化学染色が行われており、ステレオロジー解析装置を用いた細胞計測が進行中である。 また、同時に嗅球における脳室周囲からの神経幹細胞の分化を明らかとするため、嗅球の神経細胞の分化を表すマーカー(TH、DCX)を用いてステレオロジー解析装置を用いて計測し、成熟神経細胞の構成比や神経幹細胞の数の様々なステージにおける変化を明らかにする事も目的としているが、現在嗅球の標本を用いてその染色を実施している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き加齢動物の標本作成を行うとともに、各嗅覚器の免疫組織化学法を用いた組織染色を行う。また、ステレオロジー解析装置を用いて、各日齢・週齢におけるOMP陽性嗅神経細胞を測定する。 加えて、嗅球の神経細胞の分化を表すマーカー( TH 、DCX ) を用いて免疫組織化学的手法により嗅球を染色し、ステレオロジー解析装置を用いて計測し、細胞数の変化を明らかにする。 さらに、測定値を基にラットにおける鼻腔・嗅覚系の神経細胞数の変化・性差等を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は実験動物(ラット)、試薬・薬品類等、手術用器具等、ガラス器具等に使用予定である。 研究費の内、実験動物については購入・管理(動物実験施設の利用等)が必要不可欠である。試薬・薬品類は免疫組織化学法を用いて実験を行ううえで必要な抗体類(各種神経系マーカー、2次抗体等)、その他固定・包埋・薄切等に必要な薬品等も含む。手術用器具としてはメスの替刃、ドリルチップ、縫合糸等の消耗品や麻酔薬等を含んでいる。ガラス器具等と、実験に付随するものとしての消耗品費(スライドガラス、プレートや実験用ピペットチップ等)を計上している
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