研究概要 |
本研究では新生児期から成獣期、老齢期までの正常な雄雌のラットを用い、様々なステージにおける嗅神経細胞数をステレオロジーの手法を用いて明らかにする事を目的としている。 本研究を実行するに当たり、我々はステレオロジー解析装置(Stereoinvestigator:MBF Bioscience,USA )における最適なステレオロジー計測の設定値を確定し、各週齢における鼻腔内の嗅覚器・すなわち主嗅上皮(Main Olfactory Epithelium:MOE)及び鋤鼻器(Vomeronasal Organ:VNO)の抗Olfactory Marker Protein(以下OMP)抗体陽性の神経細胞数を測定した。なおOMPは神経幹細胞から分裂後、軸索を嗅球に投射した成熟した神経細胞が発現する蛋白であり、OMP陽性神経細胞数を測定することにより機能している神経細胞のみの数を計測可能となった。 結果、ラット鼻腔における主嗅上皮(MOE)におけるOMP陽性細胞数は新生児期(P0)で52万±1万であるのに対し、成長に伴い成獣期(8w)では2120万±81万となることが明らかとなった。すべての時期を通して明らかな左右差や性差は認められなかった。また細胞数だけでなく、頭蓋骨の大きさは日齢・週齢ともに性差なく同程度の大きさで成長することが明らかになった。一方鋤鼻器(VNO)は、新生児期(P0)で6千±867であるのに対し、成長に伴い成獣期(8w)では24万±3万となることが明らかとなった。 これらの結果、鼻腔内の嗅覚器の前後長は成長に伴い3-5倍になるのに対し、各嗅覚器のOMP陽性神経細胞数は約40倍になることが明らかとなった。
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