「メニエール病」や最近注目されている「急性低音障害型感音難聴」など低音部が中心に障害される感音難聴は、その他の感音難聴と発症メカニズムや病態が異なると考えられているが現在までのところ良く分かっていないのが現状である。低音障害感音難聴を呈するメニエール病の原因となる遺伝子多型を同定するために、信州大学が中心となって行っている「難治性内耳疾患の遺伝子バンク構築研究」と連携し、すでにインフォームドコンセントを取得のうえ、採血にて得られたメニエール病患者のDNAサンプルを使用して遺伝子相関解析を行った。 遺伝子多型の選択には、Hapmap Japan Projectのデータベースを参考にして、論文などでメニエール病との関連が指摘されているアクアポリンやカリウムイオンチャネルなどの候補遺伝子、低音障害型感音難聴の原因遺伝子であるWFS1の多型を中心に、TaqMan genotyping法を用いて解析を行った。またコントロールとしては難聴を有さない健常ボランティア200名を用いた。また、前年度までに加えて、突発性難聴との関連が指摘されているジヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)遺伝子、活性酸素種除去酵素(SOD)遺伝子の多型も検討を行った。その結果、解析したSNPsに関してはメニエール病患者群とコントロール群との間に有意差は認められなかった。今回使用したサンプルは192症例と類似の研究としては比較的多数のサンプルを利用していることより、今回有意差が認められなかった原因として、メニエール病の中にいくつかのサブタイプが存在し、サブタイプごとに関連する遺伝子群が異なっている可能性が示唆された。今後、解析対象人数を増やすとともに、解析対象遺伝子を増やすことにより、メニエール病の発症に関与する遺伝子を同定することが可能となり発症メカニズム解明が期待される。
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