近年、micro RNAと呼ばれる翻訳されない短いRNA分子が、発生、分化、生命機能維持や発ガンなど様々な生命現象において大きな機能を担う事が明らかとなってきた。この短いRNAの作用メカニズムとして、micro RNAに含まれるseed領域と呼ばれる18塩基程度の領域が、mRNAとハイブリッドを形成し、そこにRNA分解酵素を含むRISC複合体が形成されて、遺伝子発現を抑制すると推定されている。昨年度までに、内耳におけるmicro RNAの解析を加齢促進モデルマウスとそのコントロール系統を用いて、DNAマイクロアレイ法およびRT-PCR法により発現量の詳細な検討を行った。その結果、加齢性難聴マウスでのみ内耳で発現が減少するmicro RNAを見出した。発現量が減少したmicro RNAの中には、内耳の機能に重要であることが示唆されているmicro RNA(miR-96、miR-182、miR-183)が含まれていた。特にmiR-96は優性遺伝形式をとる遺伝性難聴の原因遺伝子(DFNA50)として報告されており、どのようなメカニズムで難聴が引き起こされているのかの解明に興味が持たれている分子である。 また、これらmicro RNAがどのような役割を果たしているかを明らかにすることを目的に、Ribocluster沈降法を用いて、Dicer、Ago2を含むRISC複合体を抗Ago2抗体を用いた免疫沈降により回収し、そのなかに含まれているRNA分子をcDNAマイクロアレイ法および定量RT-PCR法を用いて解析を行った。その結果、注目していたmiR183と相補的な配列を持つ複数の候補遺伝子を同定した。
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