研究課題/領域番号 |
23791889
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
宮川 麻衣子 信州大学, 医学部附属病院, 助教(特定雇用) (60467165)
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キーワード | メニエール病 / 前庭機能 / 画像診断 / 内リンパ水腫 |
研究概要 |
従来からメニエール病の病態は内リンパ水腫であるとされているが、確定診断は側頭骨病理による以外なく、実際の患者の診断の際に苦慮することも少なくない。現在我国では厚生省特定疾患前庭機能異常研究班のメニエール病診断基準(1974年)が用いられているが、この診断基準では、めまいの反復や難聴の随伴など臨床症状が中心であり、メニエール病の病態である内リンパ水腫とは直結しておらず、補助診断であるグリセオールテストや蝸電図は間接的に内リンパ水腫を証明する検査にすぎず、実際に内リンパ水腫を確認することは困難であった。 近年、ガドリニウムを鼓室内投与し、3T-MRIを用いることにより、内リンパ水腫が画像的に証明できるようになった。これは、今まで側頭骨病理でしか証明できなかった内リンパ水腫を、実際の症例で確認できる画期的な方法である。原理としては、希釈した造影剤(ガドリニウム)を経鼓膜的に中耳に注入し、24時間後にMRIを撮影する。ガドリニウム分子は正円窓を通過し、外リンパ腔に移行する。しかし、ライスネル膜は通過できず、内リンパ腔には移行しないために、外リンパ腔と内リンパ腔が区別され描出される。その結果、内リンパ水腫があると拡大した内リンパ腔は透亮像として確認できる。メニエール病患者を対象に、従来の内リンパ水腫推定検査であるグリセオールテストや蝸電図などの間接的証明法を行い、内リンパ水腫の陽性率を求め、画像診断の陽性率と比較検討している。これまで20症例を対象に行い、グリセオールテストの陽性率は55%、蝸電図は60%で両者を組み合わせると75%であった。これらの陽性率は、過去の報告と比較しても妥当なものである。それに比べ、本手法のMRIを用いた画像診断では95%と陽性率が高く、内リンパ水腫を同定するには非常に有効な検査であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおりグリセオールテストなどの他の内リンパ水腫を評価する検査手法と、ガドリニウム造影3T-MRIによる内リンパ水腫評価法の感度および特異度の比較検討を行い、その陽性率を明らかにすることができた。また、パイロット的に、数症例に関してメニエール病の治療に用いられる薬剤(浸透圧利尿剤、ステロイド、脳循環改善薬など)の投与前後で同様の評価を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
メニエール病の発作期と寛解期における内リンパ水腫の程度を画像的に比較することで、病態の変化と内リンパ水腫の程度の相関を検討する。また、メニエール病の治療に用いられる薬剤(浸透圧利尿剤、ステロイド、脳循環改善薬など)の投与前後で、内リンパ水腫の程度を比較する計画である。また、現在までに、メニエール病関連遺伝子としてCOCH、KCNE1、PTPN22, HSPA1A, PARP-1, ADD1などが報告されているが、遺伝子多型がメニエール病を起こすメカニズム等については不明である。本研究では、画像診断の結果に基づきメニエール病のサブグループ化を行い遺伝子解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度までに引き続き、画像診断に必要な試薬および遺伝子解析に必要な試薬、プラスチック消耗品を購入する計画である。
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