研究課題/領域番号 |
23791891
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
江藤 みちる(伊田みちる) 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80393148)
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キーワード | 神経ペプチド / ストレス / 内耳 / シナプス / ラット |
研究概要 |
本研究の目的は、生理活性ペプチドマンセリンの内耳における局在とストレス下での機能を明らかにすることである。本年度は、ストレスモデルラットを作製し、マンセリンの局在変化について検討した。 既報に従い8週齢ラットを水深1.5 cmで5日間飼育し、ストレスラットを作製した。対照群と比較して体重増加の抑制および胸腺の萎縮がみられた。血液を採取し、血漿ACTH濃度および血清コルチコステロン濃度をELISAにより定量を行い、ストレス負荷により濃度増加がみられ、ストレス亢進が確認された。内耳の組織切片を作製してマンセリンの免疫染色を行ったところ、II型らせん神経節細胞におけるマンセリンの発現がストレス負荷により減弱していたが、II型らせん神経節細胞に特異的に発現する中間径フィラメントperipherinの免疫染色では、細胞体の面積やその発現に差は認められなかった。従って、内耳マンセリンはストレス感受性であり、その変化はperipherinや細胞の形態の変化がまだ見られない時期に起こることが示された。 また、II型らせん神経節細胞は内耳コルチ器の外有毛細胞とシナプスを形成し、外有毛細胞は内側オリーブ蝸牛束からの遠心性経路により制御を受けることから、遠心性聴覚神経線維プレシナプス末端に局在する小胞性アセチルコリントランスポーターの免疫染色を行ったが、ストレス下での差は認められなかった。 さらに、神経線維の走行について検討するため、コルチ器のsurface preparationを作製し、マンセリンの免疫染色を行った。コントロールラットの内耳において、組織切片の結果と同様、II型らせん神経節細胞の細胞体および有毛細胞へ向かう神経線維、内・外有毛細胞付近にシグナルが見られた。蝸牛の基底回転部から頂回転部にかけて差は見られず、低音から高音まで広い範囲でマンセリンは聴覚制御に関わっていることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はストレス下でのマンセリンの局在について明らかにすることができた。さらに、surface preparationの作製を行い、3次元的な解析も可能となった。Surface preparationを用いて、ストレス下でのマンセリンの局在の変化についての解析は現在進行中である。短期器官培養系での検討にもsurface preparationが不可欠であることから、現在は手技のトレーニングも含め準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
ストレスに対するマンセリンの機能について解析していくため、短期器官培養系を用いたマンセリンの神経保護効果について検討する。過酸化水素やtert-butyl hydroperoxideで酸化ストレスを誘導し、ファロイジン染色やTUNEL染色、Caspase-3抗体による免疫染色などで細胞死や有毛細胞の脱落を評価し、マンセリン添加によりどの程度抑制されるかを調べる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験動物(ラット)や免疫染色に必要な試薬・器具類、培養実験に必要な試薬を購入予定である。 研究成果については国内外での学会発表を予定しており、旅費・参加費に使用する予定である。
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