頭頸部癌の場合、そのステージによっては放射線療法や化学療法が用いられる。しかし、これらは副作用として激しい嘔吐を引き起こすことが問題になる。嘔気・嘔吐は主にセロトニン3受容体の活性化によって引き起こされるが、抗癌剤の投与によって多量のセロトニンが分泌されることで、この受容体が活性化され嘔気・嘔吐が引き起こされると考えられていた。しかし抗癌の中には激しい嘔吐を引き起こすもの、ほぼ引き起こさないものなど様々あり、抗癌剤によるセロトニン分泌のみでは説明がつかない。そこで我々は抗癌剤が直接セロトニン3受容体の応答を調節する可能性があるのではないかと予想した。そこでいくつかの抗癌剤について検討したところ、大腸癌などの固形癌で幅広く使用されている抗癌剤イリノテカンがセロトニン3受容体の応答を直接抑制することが明らかとなった。またその抑制効果はセロトニン3受容体のサブユニット構成によって異なった。抗癌剤が直接セロトニン3受容体の応答調節に関わるという本研究の結果により、催吐作用の少ない抗癌剤の開発につながると考えられる。
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