研究課題/領域番号 |
23791899
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
淵脇 貴史 島根大学, 医学部, 助教 (10437543)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | CD30 ligand / allergic rhinitis / Th2 cells / CD30免疫グロブリン融合蛋白 |
研究概要 |
CD30 ligand (CD30L)とCD30は活性型CD4陽性T細胞に発現しており、その相互作用はT細胞の分化、増殖、成熟に関与している。CD30L/CD30 シグナルを介したT細胞間相互作用がTh1反応に重要であるとの報告はあるが、Th2反応において、CD30Lがどのような役割をはたしているか詳細は不明である。今回、アレルギー性鼻炎におけるCD30Lの役割をCD30L knock out(CD30L KO)マウスを用いて検討を行った。Ovalbumin(OVA)に対するアレルギー性鼻炎モデルを作成し、CD30L KOマウスと野生型マウスにOVAを全身感作し、局所点鼻を行ったところ、CD30L KOマウスにおいてくしゃみ、鼻かきの回数の有意な低下がみられた。鼻粘膜組織中の好酸球数、リンパ球数も野生型マウスと比較してCD30L KOマウスで低下していた。フローサイトメトリーにて組織中の免疫細胞の分布について解析したところ、CD30L KOマウスにおける鼻粘膜のCD4陽性T細胞、好酸球、肥満細胞の数、頸部リンパ節のCD4陽性T細胞、B細胞の数に有意な低下がみられた。血清中のOVA特異的IgE濃度をELISA法にて測定したところ、OVAの点鼻後に野生型マウスと比較してCD30L KOマウスで有意に低下していた。OVA特異的Th2サイトカイン産生(IL-4,IL-5,IL-13)は点鼻後の所属リンパ節においてCD30L KOマウスで減少していた。以上より、CD30L/CD30シグナルを介したT細胞間相互作用はTh2細胞の分化、増殖、サイトカイン産生に関与し、アレルギー性鼻炎における反応相に非常に重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CD30L KOマウスにおいて、くしゃみ、鼻かきの回数、鼻粘膜中の好酸球数、鼻粘膜のCD4陽性T細胞、好酸球、肥満細胞の数、頸部リンパ節のCD4陽性T細胞、B細胞の数、血清中のOVA特異的IgE濃度、OVA特異的Th2サイトカイン産生(IL-4,IL-5,IL-13)が有意に低下しており、活性型CD4陽性T細胞に発現しているCD30Lがアレルギー性鼻炎の反応相に非常に重要であることが示されたため。
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今後の研究の推進方策 |
T細胞間相互作用を阻害するCD30免疫グロブリン融合蛋白を点鼻することでアレルギー性鼻炎の反応相を抑制できるかどうか検討する。具体的な方法として、野生型マウスにOVAを全身感作した後、局所点鼻する前にCD30L/CD30の相互作用を阻害するCD30免疫グロブリン融合蛋白を点鼻する群とcontorol IgG1を点鼻する群とに分けて、くしゃみ、鼻かきの回数、鼻粘膜中の好酸球数、鼻粘膜のCD4陽性T細胞、好酸球、肥満細胞の数、頸部リンパ節のCD4陽性T細胞、B細胞の数、血清中のOVA特異的IgE濃度について比較を行う。また、CD30L KOマウスと野生型マウスのナイーブCD4陽性T細胞をFACS ariaでソーティングし、OVAで刺激して細胞の増殖能、サイトカイン産生量について比較検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年の時に主に使用した研究費用は、マウスの購入代金、フローサイトメトリーの抗体、ELISA測定キットが主であり、想定より少ない金額の研究費で実験を行うことが可能であり、繰越研究費が生じた。しかし、平成24年度には上記に加えて、CD30免疫グロブリン融合蛋白を精製するためのProteinG、確認のためのSDS-PAGEの試薬、FACS aria使用のための抗体購入代金が必要となるため、平成23年度より多い研究費が必要となることが予想される。
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