本研究はSLE関連遺伝子でIL12の発現を促進させる働きを持つと我々が報告したIfi202のヒトホモログであるIfi16をがん治療に応用することを目的として行った。IL12の発現を促進することで、Th1細胞が誘導され抗腫瘍効果の増強が期待される。 当初の計画では悪性度が高く治療困難である甲状腺未分化癌での解析を目的としたが、甲状腺未分化は頻度が低く症例数が限られるためまずは中咽頭扁平上皮癌(SCC)におけるIfi16の役割について検討した。 頭頸部SCCにおいてIfi16高発現群そしてヒト乳頭腫ウィルス(HPV)感染群では予後が良好であるという先行研究があり、また近年HPV陽性中咽頭SCC症例は治療反応性であり予後が良好であるという多数の報告がされており、まずはHPV陽性群が予後良好である要因としてIfi16が関与しているという仮説を立てそれについて検討した。 未治療中咽頭SCCの切除標本を用いて、免疫染色でHPV感染のマーカーであるp16タンパクとIfi16タンパクの発現を調べ、それらと治療予後との関連について検討した。過去の報告のとおりHPV陽性(p16陽性)群では陰性群と比較して予後が良好である結果が得られたが、Ifi16の発現の有無によって予後の違いは見られなかった。またp16の発現とIfi16の発現の有無に相関は見られなかった。 先行研究の結果と異なりIfi16発現による予後の違いがみられなかった原因としてHPVE6/E7タンパクとがん抑制遺伝子であるpRbタンパクの関与の可能性が考えられた。 今後、中咽頭SCCにおけるIfi16とE6/E7タンパク、pRbタンパクとの関わり、また甲状腺未分化癌におけるIfi16の関与についての検討を行う必要があるが、海外の研究機関に採用されるため、平成25年3月で現在の職を辞職することとなり、中途で補助事業を廃止承認申請することとなった。
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